【獣医師執筆】犬の寒さ対策。愛犬は寒さが苦手?対策グッズも解説!

【獣医師執筆】犬の寒さ対策。愛犬は寒さが苦手?対策グッズも解説!

2022/12/2

寒さを感じる時期になると、愛犬も寒いのではないか、何かしてあげられる対策はないか気になりますね。今回は寒さが苦手な犬の特徴や、犬が寒がっているサインについて解説。さらに室内犬、室外犬それぞれの寒さ対策を具体的にご紹介し、寒さ対策で注意すべき点やNG行為もお伝えします。

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【執筆医】ttm
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犬が寒さを感じる温度

Good indoor climate concept. Dog sitting on the pillow in front of radiator with water containers for steam

そもそも犬は人間と同じ室温で寒くないの?

被毛のある犬は、人間よりも寒さに強い面がありますので、基本的には問題ありません。一方で、人間がそれほど寒さを感じていなくても、犬によっては寒い可能性もあります。

犬のいる場所は床に近いため、空気が冷えており、人間にとっては寒くない室温でも、足元の愛犬は寒さを感じている可能性もあるからです。

大型犬、中型犬、小型犬それぞれの寒さリスクと気温

何度になると犬が寒さを感じるかは、その犬によるため一概には言えません。まずは、体格と寒さについて表で解説します。

大型犬

7℃までは寒さによるリスクがない。4℃ではリスクは低いが気をつけること。2℃ではリスクがある。

中型犬

10℃までは寒さによるリスクがない。7℃ではリスクは低いが気をつけること。4℃以下ではリスクがある。

小型犬

13℃までは寒さによるリスクがない。10℃ではリスクは低いが気をつけること。4℃以下ではリスクがある。

<参考記事>

How Cold Is Too Cold for Dogs To Go Outside in the Winter?

寒さに弱い犬のタイプ

Portrait of a cute Bolognese dog, studio shot, isolated on black.

同じ体格でも寒さが苦手な犬とそうでない犬がいます。PetMDという海外獣医師グループによるオンラインサイトを参考に、さらに寒さが苦手な犬の特徴について細かくお伝えします。
   

ポイント

被毛がシングルコートの犬は寒さに弱い

被毛が下毛のない「シングルコート」の犬は寒さに弱いです。下毛と上毛の二層からなる「ダブルコート」の犬は寒さに強いです。

白い毛色の犬は温まりにくい

黒、茶色など濃い色の被毛の犬は、太陽光から熱を吸収しやすいです。白など薄い毛色の犬は太陽光からの熱を吸収しづらく温まりにくいです。

小型犬は大型犬より寒さに弱い

体の表面積と体重(体積)の比率から、小型犬の方が大型犬より体の熱が逃げやすく、寒さに弱いです

痩せている犬は寒さに弱い

体脂肪は断熱材の役割を持つため、痩せすぎている犬は寒さに弱いです。

寒さ慣れしていない犬は寒がり

室内飼いで寒さに慣れていない犬は寒がりの傾向があります。

子犬と高齢犬は寒さに弱い

子犬、高齢犬、基礎疾患のある犬は体温調節が苦手で寒さに弱いです。

<参考記事>

PetMD  How Cold Is Too Cold for Your Dog?

犬は10℃前後から寒さに気をつけること

ここまでの解説を総合すると、10℃前後から犬は寒さを感じる可能性があります。

特にトイ・プードル、ヨークシャーテリア、マルチーズ、パピヨン、シーズなど日本の室内で一般的に飼育されている犬は寒さが苦手な傾向があります。子犬、高齢犬、基礎疾患のある犬も寒さへの注意が必要です。

犬が寒がっているサイン

Sleeping beagle on the sofa in living room

愛犬が寒さを感じているサインには早めに気づきたいですね。寒さを感じた時の反応は人間と犬で大きな違いはありません。

寒い!と感じているサイン

  • 体を丸めて小さくなる
  • 震える

上記が最もわかりやすいサインでしょう。

動物は寒さを感じると、熱ができるだけ逃げないように体の表面積を小さくしようとします。同じ体積で一番表面積が小さい形は「球」なので、無意識に体を丸めて球になろうとするのです。

また寒さを感じると、筋肉は熱を算出しようとして意思とは関係なく震えます。よって体は小刻みに震えます。体を丸めて小さくなったり、震えるというのは犬がすでに寒さをかなり感じている段階だと言えます。

ちょっと寒いかも…というときのサイン

  • ウロウロと落ち着かず温かい場所を探す
  • 足を持ち挙げる仕草をする
  • タオルや毛布などにくっついたり入り込む

などの様子を見せた時も犬が寒くなりはじめているサインです。

また犬は寒さを感じると「立毛筋」という筋肉が収縮するため、毛が逆立つこともあります。立毛筋は、寒さだけでなく興奮した時などに自分の意思と関係なく収縮します。必ずしも寒さと関係あるわけではありませんが、飼い主様が寒いなと感じている時に愛犬の毛が逆立っていたら、愛犬も寒さを感じているかもしれません。

室内犬のための寒さ対策、おすすめグッズ

暖房機器

留守番中や就寝時も使えるグッズ

エアコン

室内犬の場合、エアコンでの室温の調節が大切です。

設定温度は20℃~25℃くらいを目安に、犬の様子を見て決めましょう。

湿度も調節できるなら、50%~60%程度が良いでしょう。

   

湯たんぽ
湯たんぽは留守番中も使え、コストパフォーマンスも良いアイテムです。ただし、海外では45℃のお湯をラテックス手袋に入れて犬の体を温めた使った結果、火傷を発症したという報告があります。湯たんぽにはカバーを付け、入れるお湯の温度はじんわり温かい35℃程度にしましょう

<参考>

Thermal Burns in Four Dogs during Anesthesia

   

毛布
毛布は温かいだけでなく、入り込むことで犬が安心できたり、潜ってひとり遊びができるなど便利です。

   

カーペットやラグ、ジョイントマットなどの敷物
床がフローリングの場合、エアコンと合わせてカーペットやラグ、ジョイントマットなどの敷物を使用すると、経済的に部屋を温めることができます。

在宅時に使えるグッズ


●ホットカーペット
床の冷えを解消し、床に近い位置で生活する犬が快適に過ごせます。ホットカーペットの設定は「強」の場合低温やけどにつながる可能性があります。「中」や「弱」が良いでしょう。

   

●ペット用ヒーター
ホットカーペットと同様、床を温めるグッズですが、コードなどがしっかり補強され犬が噛んでも感電のリスクが少ないなどより犬に配慮されています。

   

●電熱ストーブ
電熱ストーブはスイッチを入れると瞬時に温かくなるため、寒い日の朝などに使いたくなりますね。犬は被毛に覆われているため、人間より熱さを感じるのが鈍く、被毛の先が焦げてしまっても本人が気づかないなどの事故が起こる可能性があります。電熱ストーブは必ず飼い主さまがみている間のみ使い、犬が接近し過ぎないように注意する必要があります。

室外犬のための寒さ対策、おすすめグッズ

The yard dog sits near the kennel tied with a chain in winter. Dogs, home security

室外犬は、エアコンによって気温を調節できないぶん、犬小屋を温める工夫を中心に寒さ対策を行いましょう。

   

●犬小屋の壁に段ボールなどを貼る
壁を段ボール、断熱シート、ビニールシートなどで覆うと、保温効果が上がります。小屋の床面にも段ボールを貼ったり、ジョイントマットなどを敷くと良いでしょう。

   

●入口をふさぐ
入口から風や雪などが入らないように、ビニールシートやビニールカーテンなどでのれんを作ると防寒対策になります。

   

●ドームハウスや大き目の毛布を入れる
市販のドームハウスが使えるようなら、犬小屋に入れてあげると愛犬がすっぽり入れます。大き目の毛布でも代用できるでしょう。

   

●犬小屋を日当たりの良い場所に移動させる
可能であれば、犬小屋を日当たりの良い場所や、風が当たらない場所、高めの場所に移動させましょう。

   

●ウェアを着せる
犬に防寒服を着せたり、凍傷の予防にシューズを履かせるのも良いでしょう。ウェアは着せっぱなしにせず、こまめに洗濯をしましょう。犬用シューズを買うのに迷ったら100均商品で自作してみるのも良いでしょう。活用するのは椅子カバーです。裏側に滑り止め防止でシリコンを塗ると良いでしょう。そのままだとすぐに脱げてしまうので、ゴムなどで縛りましょう。きつく縛りすぎるとうっ血するので注意が必要です。

寒さ対策の注意点

脱水に注意

寒い時期は犬の自発的な飲水が減ることが多いです。加えて、エアコンの利用などで室内の湿度が下がるため、犬が脱水しやすい環境になります。冬は水が冷たすぎないように気を付けましょう。犬が水を好んで飲むように、鰹節で出し汁を作って少しだけ混ぜたり、犬用ミルクを少量入れてみるなどの工夫も良いでしょう。

寒暖差をつける

室内でも、犬がより快適な場所を選べるように少しの寒暖差をつけましょう。例えばホットカーペットは部屋全体に敷くのではなく一部にするなどの工夫で、犬が自分で好きな場所を選べるようにするのが良いでしょう。

電気製品に要注意

子犬の時、特に歯が生え変わる時期の生後4~6カ月くらいの子犬は何でも噛んでしまいます。電気製品は感電の恐れもあるため、子犬から目を離さないように注意が必要です。

室内犬が散歩に出る前はウォームアップや防寒着を

室内犬は屋外との寒暖差に注意が必要です。温かい屋内から急に寒い屋外に出るのは心臓などへの負担が大きいです。室内で遊んだり走らせるなどのウォームアップをして、防寒着を着せるなどの対策を取って出かけましょう。

これはダメ!間違った寒さ対策

使い捨てカイロ

×カイロを犬に貼る


人が服の上から使用するには快適なカイロですが、犬に使用するのは低温やけどの原因になります。

ただしカイロをタオルなどにくるみ、湯たんぽのように使用することはできます。屋外から帰宅して、凍えている時などは飼い主さんの見ている範囲内で直接貼らない使い方をしても良いでしょう。

×服を着せっぱなしにする

寒いからと言って服を着せっぱなしにするのはNGです。通気性が悪くなる、服の素材によっては毛玉ができやすい、服と皮膚が擦れるなどの要因で、皮膚トラブルの原因になります。室内犬は、散歩で屋外に出る時だけなど、服を着る時間は決めましょう。

×フードを増やす

寒い時期はエネルギーの消費が早いからフードを増やすという飼い主さまもいらっしゃいます。室外犬の場合は、体重測定を行い、実際に体重が減少していたら増やすなどの工夫は良いですが、室内犬は冬だからと言ってフードを増やす必要はありません。「冬太り」になってしまいます。

犬の寒さ対策Q&A

.犬が寒がっている時に温めてあげると良い体の部位はありますか?

犬の内股を温めてあげましょう。血液を温めると体が温まります。内股の血管は比較的太く皮膚の近い位置を通っているので、この部分を温めると血液が温まりやすいと言えます。内股を温めるのが難しい場合は、外側から腰あたりを温めてあげると良いでしょう。

寒がっている犬を放っておくとどうなりますか?

凍傷や低体温症になってしまいます。寒さで震えていた犬がぐったりした場合、低体温症が疑われます。低体温症では体の臓器が正常に働かなくなるため、放置すると命に関わります。

寒さを感じると愛犬の抜け毛がひどいです。ストレスでしょうか?

ストレスの可能性もありますが、見た目の抜けが多いだけの可能性も高いです。寒さを感じると犬の立毛筋が立つため、すでに抜けて他の毛に挟まっていた毛が一斉に落ちることがあります。これが飼い主様には抜け毛が増えたように見えるのです。

上手に寒さ対策をして冬を乗り切りましょう!

Cute dog in hat and with warm scarf at home. Concept of heating season

犬は寒さを感じると必ずなんらかのサインを出します。愛犬の様子をよく観察し、寒さのサインにいち早く気づいてあげましょう。寒い冬を乗り切れば、また温かい春がやってきます。愛犬の寒さ対策をしっかり行い、健康に冬を乗り切りましょう。

   

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獣医師
【執筆医】ttm

動物園獣医師としての経験を活かし、様々な種のペットの健康や生活のための情報発信を心がけています。 これまでにポメラニアン、ヨーキー2頭、ハムスター、リスと飼育数も多く、現在はカメと暮らすなど動物大好きです。

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