
【獣医師執筆】犬は生クリームを食べても大丈夫?注意点や適量、リスクのある犬種について知ろう
生クリームには犬にとって毒になるものは入っていないので、少量であれば食べても大丈夫なことが多いです。また生クリームは犬にも美味しい成分が多いので、喜んで食べます。
しかし一般的に認識されているホイップクリームには大量の脂肪分と砂糖などが含まれているので、犬にとっては過剰なカロリーになってしまいます!
毒ではないものの、下痢や吐き気、膵炎を起こすことがあるので、生クリームをあげる前に注意点を知っておいてくださいね。
目 次
犬は生クリームを食べても大丈夫です

犬が生クリームを食べるメリット
本来の生クリームは、牛乳の脂肪分を凝縮したものだけでできた乳製品を指しますが、一般的に「生クリーム」と言われて思い浮かぶのは、白くて甘いホイップされたクリームでしょう。
今回の記事で指す生クリームは、正確な定義での「生クリーム」ではなく、よく見かける白くて甘いケーキやスイーツに活用されている生クリームです。栄養素の面から言えば、どの定義の生クリームであっても、植物性でも動物性であっても、犬の健康に良いものは入っていません。
しかしケーキなどに使用されているクリームには、糖分と脂肪分などが豊富に含まれているため、喜んで食べる犬が多いです。生クリームを犬にあげるメリットは、楽しみや喜び、ご褒美になる点。嫌いなお薬でも、生クリームをつけると自分から食べてくれることもあります。誕生日やクリスマスなど、特別な日に一緒に楽しめるところもメリットかもしれません。

愛犬が喜ぶ
特別なご褒美になる
苦手なお薬が飲めることも
中高齢期で腎臓病や心臓病が発症するようになると、毎日の投薬に苦労することも多いでしょう。
そんな時に、ほんの少しの生クリームでストレスなく投薬できるというのであれば、獣医師も許可することが多いです。投薬に使用する際には、必ず獣医師に確認をとってからあげるようにしてください。
ただし、それが習慣化して、どんどん肥満になっていくようであれば話は違います。
肥満は人も犬も万病のもとです。体重の増減はしっかりと確認しましょう。
そしてどんな物でも食べ過ぎれば体に悪いことが多くなってしまうので、適量を知ることが大切です。
犬に生クリームをあげる時の適量
「生クリームをどのくらいあげても良いですか?」というご質問をよく伺います。あるいは「机に置いてあったシュークリームを犬が食べてしまいました!」というケースも多いです。
残念な事に、どの犬にも大丈夫な生クリームの量、という明確な指標はありません。生クリームを「おやつ」ということで考えれば、一日の必要カロリーの10-20%に抑えることが大切です。
この計算でいうと小型犬(体重5㎏前後)では生クリーム大匙1杯までが許容量ということに。しかし、この量でも下痢や吐き気、アレルギー症状や膵炎になる犬も多くいます。逆に、体重6㎏のMダックスがマリトッツォ丸々1つ食べても何の症状も出ないことも。つまり「これ以上は絶対にダメ、これ以下なら大丈夫」などという指標はないのです。

生クリームの適量は犬によって違う
おやつとしてなら大体大匙1杯
しかし、小さじ1杯でも下痢や吐き気が出る犬もいる
たくさん食べても大丈夫な犬もいる
犬が初めて生クリームを食べる時の注意点

お祝いに愛犬にもケーキをあげたいと思う飼い主さまは多いですが、ちょっと待って!生クリームを初めてあげる時は以下の点に注意しましょう。

- 最初は小指の先ほどのひと舐めから
- 数時間は吐き気や下痢、湿疹などが出ないか確認
- 今までに乳製品で体調を崩したことがあるなら、あげない
- 食べてすぐに過剰な運動はしない
まず大切なのは、ごく少量だけをあげてみることです。
大半の犬は生クリームでアレルギー反応などを起こすことはないのですが、もしアレルギー反応が出てしまったら大変です。血流が良くなりすぎると、アレルギー反応が出やすくなるので、食べてすぐは運動しないようにしましょう。
翌日まで問題がなければ、少量の生クリームなら問題ないと判断できます。生クリームの主成分は脂肪分なので、乳糖不耐性の犬でも食べられることが多いです。ただ脂肪分が多いということは=消化器に負担がかかるということなので、下痢を起こしやすい一面があることには留意してください。
<こんな症状が出たら、あげるのをやめましょう>

- 皮膚や目、口などを痒がる、赤みが出る
- 呼吸が早くなる
- 嘔吐
- 下痢
体質に合わない場合は、上記のような異変が出ることがあります。症状が急激な場合や2〜3日続く場合は動物病院に連れて行くことをお勧めします。
この持病がある犬に生クリームはダメ
以下のような持病がある犬に生クリームはあげてはいけません。喜ぶ姿が見たくても、そのひと口で愛犬が苦しむかもしれないからです。

- 膵炎
- リンパ管拡張症
- 炎症性腸炎
- アレルギー性皮膚炎
膵炎
上記の中で膵炎は最も危険な病気で、脂肪分の摂り過ぎが命に関わるケースもあります。
膵炎とは、膵臓に炎症がおきている状態で、吐き気や下痢、食欲不振、元気喪失、腹痛などの症状がでます。
腸炎
膵炎以外にも、リンパ管拡張症、炎症性腸炎などの持病がある犬には脂肪分が大敵です。下痢や軟便、食欲不振が症状として出てしまうでしょう。大体のケースでは、決められた治療食が処方されているはずなので、それ以外を口にするときには担当の獣医師に必ず確認してください。
皮膚炎
吐気や下痢という症状ではなく、皮膚が痒くなるケースもあります。食べたものの影響は、皮膚に出やすいものです。特に加水分解タンパクなどの治療食を食べている皮膚炎の犬は、少量でも他の食材を口にするのは良くありません。
乳製品によってアレルギー性皮膚炎が悪化してしまうと、愛犬は痒くて辛い思いをするでしょう。
アレルギー体質の犬には、生クリームであっても十分に注意して与えるようにしてください。
<関連記事>
皮膚トラブル(細菌性皮膚炎・アトピー性皮膚炎)と東洋医学【獣医師解説】
この犬種に生クリームはダメ!?

犬種によって好発疾患(かかりやすい病気)も違うため、生クリームを食べて問題が出やすい犬種とそうでもない犬種がいます。問題が出やすい犬種とは、「膵炎になりやすい犬種」、「腸炎が多い犬種」そして「食欲があまりない犬種」です。
膵炎になりやすい犬種
- トイプードル
- ミニチュアシュナウザー
- ヨークシャーテリア
- シェットランドシープドッグ
上記の犬種は遺伝的な高脂血症を持っていることが多く、膵炎になりやすいと言われています。経験的にも入院しているのはトイプードルやヨークシャーテリアが多い印象です。
また膵炎から糖尿病にまでなってしまうケースも多くあり、毎日の食生活の大切さを強く訴えたいです。逆に長く飼育頭数上位にいる、柴犬やパピヨン、シーズーは膵炎での入院はあまり見かけません。
腸炎が多い犬種
- ヨークシャーテリア
- マルチ―ズ
- フレンチブルドッグ
リンパ管拡張症や炎症性腸炎などの腸炎になるリスクが高い犬種は、脂肪分の多い食餌で発症してしまうことがあります。また治療中であれば生クリームによって病状は悪化してしまうでしょう。
もともと軟便が多い、あるいは食べても痩せ気味という愛犬であれば、高脂肪分である生クリームはあげない方が良いでしょう。
食欲があまりない犬種
- トイプードル
- チワワ
- マルチ―ズ
必要な量のドッグフードを食べないため、飼い主様が心配することが多い犬種トップ3がこちらです。他の犬種に比べて、食べることに消極的なことが多いように感じます。ときには「え?このご飯を食べるんですか?」という態度。このタイプは賢くて、美味しいものしか食べない傾向があるので要注意です。
「ドライフードは食べなくて、缶詰フードなら食べます」
「缶詰フードも食べなくなって、人のものなら食べます」
「ドッグフードを食べるまで我慢させていたら、空腹で胃液を吐きました」
「犬用ケーキをあげたら、ドッグフードを食べなくなった」
上記は獣医師としてよく聞く悩み。
賢くて食欲に勝る自制心があるのか、好きじゃないものを食べるくらいなら空腹でも良いという性格の犬もいます。美味しいものを知ってしまうと、その美味しいものが出てくるまで食べないというケースがあるのです。
この場合で難しいのが、病気で食欲が無くて食べないのか、食の好みで食べないのかが、なかなか判断できないところ。「ワガママで食べないのかと思っていたら、体調不良だった」ケースもあるので、安易に選り好みと判断するのも気を付けましょう。
素朴な疑問Q&A
生クリームと似ているカスタードクリームは犬にあげていいのでしょうか?
まとめ

生クリームを犬にあげるのは、栄養素の面からも獣医療面からしてもお勧めできるものではありません。しかし家族である愛犬にも、特別な日に美味しいものを!とケーキをあげたい気持ちは皆さんありますよね。あるいは、嫌がる投薬がストレスなく出来るということであれば、それは大きなメリットになります。
初めて食べる時にはアレルギー反応がないのかを、少量の生クリームで試してから確認しましょう。生クリームは主成分が脂肪分なので、犬種によっては大きな病気を起こしてしまう事もあるので注意が必要です。下痢や吐き気などの消化器症状が出て、元気、食欲が低下してしまった時には膵炎になっている可能性もあります。一過性の食あたりで済むケースも、入院治療で命に関わるケースもあるのです。
ご褒美やお祝いであっても、生クリームケーキなどは少量にとどめておくのがお勧めです。
特に持病がある犬は、生クリームなどの乳脂肪分を含む食餌を与える前に、担当の獣医師に確認してください。せっかく治療で良化していたものが、少しのご褒美で悪化してしまうのは、愛犬にも飼い主様にとっても良いことではないでしょう。
生クリームはデメリットも多いですが、愛犬にとって楽しい!嬉しい!という経験になります。犬種や持病、適量も注意して生クリームは与えるようにしてくださいね。
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