【獣医師執筆】犬の暑さ対策、エアコンなしはOK?快適に過ごすための工夫を詳しく解説

【獣医師執筆】犬の暑さ対策、エアコンなしはOK?快適に過ごすための工夫を詳しく解説

2023/4/4

昨今は異常気象により、日本の真夏は命に関わるほど気温が高くなる傾向があります。愛犬の命を守るための暑さ対策、注意すべきことや快適に過ごすための工夫についてご紹介します。ぜひ、参考になさって下さい。

獣医師
【執筆医】ドリトルけい
獣医師

犬が暑がっているサインとは?

暑がっている犬のイラスト

犬の体温調節の方法は
・舌を出して呼吸し、唾液を蒸発させる
・汗をかく(犬は肉球など身体のほんの一部でしか汗をかけません)
の2つです。
そのため、犬が暑がっているサインは「呼吸が速くなり、ハアハアと開口呼吸をして落ち着かない様子」からスタートします。
そのまま身体に熱がこもって熱中症に陥ると、初期には歯肉や舌などが充血する、よだれが大量に出る、動きが悪くなるなどの症状から、嘔吐や下痢、震え、痙攣、意識が無くなるなど命に関わる状況になる可能性があります

   

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犬の熱中症(熱射病)について

湿度の高さにも注意

気温だけでなく、湿度が高い場合も体内に熱がこもりやすいため、暑がっているサインを見逃さずにすぐに対処することが大切です。

   
熱中症は命に関わるため、愛犬の様子がおかしいと思ったらすぐに動物病院を受診しましょう。

犬が暑さを感じる温度と湿度

犬が暑さを感じる温度は、被毛の状態や年齢、体格などによって異なりますが、

  • 室内であれば約26℃以上の気温
  • 約70%以上の湿度

これらの環境下で、暑さを感じると考えられます。
犬は(一部の犬種を除いて)ほぼ全身が毛に覆われているため、基本的には暑さが苦手な動物です。
この様に被毛で覆われている犬の状態を、わたしたち人間に例えると「真夏にダウンジャケットを着ていることと同じ」だと言われています。

犬は人間と同じ室温で問題ないの?エアコンは何度が適正?

Operating electric fan and cute dog in room

動物取扱業における、犬猫の飼養管理基準の解釈と運用指針によると、

  • 犬にとって快適な室温は20〜23℃前後
  • 湿度は50%前後

が推奨されています。
ただし、20℃のエアコンの設定は、人間だけではなく犬にとっても寒すぎる場合があるので、愛犬の状況を見て25~26度前後で調整してもよいでしょう。

   
また、エアコンの設定温度と実際の室温は異なるため注意が必要です。
特に、以下に当てはまる場合は温度調整に細心の注意を払いましょう。

   
<体温調節が苦手な犬種>


・ダブルコート(上毛+保温や保湿の役割をする下毛)の犬種
特にシーズー・ポメラニアン・柴犬・コーギーなど
・寒い地域が原産の大型犬
アラスカン・マラミュート、サモエド、シベリアン・ハスキー、セント・バーナード、秋田犬など
・短頭種
パグ・フレンチブルドッグ・ボストンテリアなど

   
<体温調節に特に気を付ける必要がある犬>


・子犬
・シニア犬
・身体機能や免疫機能が低下している犬
・肥満傾向がある犬

節電したい!エアコンなしは危険?

Bull terrier dog sitting on the chair and licking ice cream on kitchen table

電気代が高騰している現在、節約のためエアコンを使わないで何とかならないかと考える飼い主さまもいらっしゃるかもしれません。
しかし、ご自身が犬と同じ状況(=真夏にダウンジャケットを着たまま)で真夏にエアコンなしのお部屋で過ごすことができるかどうかを考えてみて下さい。
夏は気温が低い日以外はエアコンを使って、愛犬が快適に過ごせる様に配慮する必要があります。

暑さ対策とおすすめグッズ

エアコンは必須ではありますが、「暑さ対策をしっかりしつつ、愛犬が快適に過ごせるための工夫が知りたい」という飼い主さまにむけて、具体的な暑さ対策とおすすめグッズをご紹介します。

室内犬の暑さ対策

室内犬の具体的な暑さ対策は

   
・温度計と湿度計を置いて、室内の温度と湿度をチェックする
・エアコンと一緒に扇風機やサーキュレーターを併用する
・エアコン使用の際は除湿(ドライ)も行い、温度管理と共に湿度を下げる
・水分補給が出来る様に2か所以上に水を置く
・おやつはウエットフードやヤギミルクなど水分補給ができるものを選ぶ
・クールマットやクールバンダナなど熱を吸収するグッズを取り入れる

   
などです。

   
特に、お留守番など人が長時間不在になる場合には、

   
・カーテンや日よけを使って、日光が愛犬に直接当たらないように工夫する
・留守番など長時間家を空ける際は、エアコンをつけたままにして出かける
・停電など万が一に備えて、凍らせたペットボトルをお盆の上に置いておく(ただし、いたずらする犬の場合は置く場所に注意して下さい)

   
などの対策が有効です。

室外犬の暑さ対策

本来は、屋外で犬を飼うことはおすすめできません。
特に真夏は日陰でも気温が高くなり、犬にとっては非常に過酷な状況になります。
様々な事情でどうしても室外で飼育せざるを得ない場合、日中の気温が高い時間帯は愛犬を涼しい室内に入れ、こまめに水分補給をして熱中症防止対策を心がけましょう。

おすすめグッズ

German Shepherd Dog Outside Playing In Water

着用して体温を下げるもの

●冷感素材の洋服

●クールバンダナ
人間と同じように犬も首回りを冷やすことは、体温を下げるのに効果的です。
ぬらして使うものや小さな保冷剤を入れて使うものなどがありますが、大きめのバンダナに保冷剤を並べて包んで首の周りに巻いてあげるだけでも良いと思います。
シニア犬には、SUOというメーカーの for dogs28℃ ICE COOL RINGという商品が優しく身体を冷やすのでおすすめです。

自宅でベッド代わりに使用するもの

●クールマット
●大理石ボード

触れるとひんやりする素材のものをベッドとして使用するのも効果的です。
固い材質のものだと嫌がって寝ない場合があるので、愛犬の好みに合わせて選びましょう。

暑さ対策時の注意点

保冷剤を使う場合

肌に直接触れないように注意すると共に、誤飲・誤食に注意しましょう。
保冷材に使用されている材質によっては中毒を起こして命に関わる場合があります。

サマーカット

毛を短くして涼しくする目的のために行うサマーカットは、賛否両論があります。
涼しくて犬が快適に過ごせるという意見もある一方で、極端に短くすると直射日光が当たりやすく日焼けによるダメージが強くなるという意見や、カットするよりもブラッシングを丁寧に行って、抜け毛や余分な下毛(アンダーコート)を取り除く方が暑さ対策には有効だという意見もあります。
特にポメラニアンは、短くカットすると短いままで毛が伸びなくなってしまうケースもあるので注意が必要です。

これはダメ!してはいけない暑さ対策

Speed way road blur effect

愛犬のためにと行った対策が、実はあまり効果がないばかりか逆効果だった、ということのないようにしてはいけない暑さ対策は以下の二つです。

   
✖いきなり冷たい水や氷で身体を濡らす
→末梢の血管が収縮して、深部の体温が下がらなくなるため
〇常温の水やタオルに包んだ保冷剤を使いましょう。

   
✖扇風機やエアコンの風を直接当てる
→身体が冷えすぎてしまうため
〇エアコンと扇風機を上手に使って空気を循環させましょう。
   

特に子犬やシニア犬、免疫機能が低下している犬の場合は注意しましょう。

Q&A

犬が暑がっている際や予防時に、保冷剤でどこを冷やしてあげるといいのでしょうか?

首の周りや脇、鼠径部(内側の後肢の付け根あたり)などを冷やすのがおすすめです。

暑さ対策で愛犬に氷をあげようと思いますが、大丈夫でしょうか?

与えすぎや大きさに注意すれば与えても問題はありません。
既に熱中症の症状が疑われる場合は、急激に冷やすことは逆効果なので注意しましょう。

愛犬は外では絶対にお水を飲まないのですが、どうしたらよいでしょうか?

ウエットフードやゼリー状のおやつなどの水分補給ができる食べ物や、ヤギミルクなど好みの飲み物を用意してみましょう。
どうしても難しい場合は、水分が多く身体を冷やす効果があるスイカを常温で与えるのもおすすめです。
与える量は多くても全給餌量の10%以内に抑えることと、その範囲内であっても愛犬のお腹の様子をみて与えすぎに注意することが大切です。

夏の間のお散歩で特に注意することを教えて下さい。

アスファルトの温度が55℃だと、人の顔の高さでは30℃ぐらいでも、犬の高さでは40℃になっているというデータがあります。
お散歩はアスファルトが熱くなる前の日の出前か夜にして、歩く場所もできるだけアスファルトを避けるようにしましょう。

まとめ

Chocolate brown color American Bully male dog is on green grass. Medium sized dog with a muscular body

犬は、基本的に暑さが苦手な動物です。また、人間の様に自分で水分補給ができないため飼い主が気をつける必要があります。
愛犬が舌を出してハアハアと速い呼吸をし始めたら、暑さを感じているサインです。
こまめに水分補給をして、涼しい場所に移動する、常温の水で濡らしたタオルで身体を覆うなど暑さ対策をしてあげましょう。
室内では気温を26℃以下に保つこと以外に湿度を50%前後に調整することも、暑さ対策として有効です。
特に、真夏は暑さ対策グッズなどを上手に使って熱中症対策を心がけましょう。

獣医師
【執筆医】ドリトルけい

動物病院で働いている現役獣医師。豊富な経験をいかし、飼い主さまに安心していただける様なコラムの作成に尽力しています。

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