【獣医師執筆】猫のフケの原因は病気?取り方や対処法、出やすい猫についても解説
猫は人や犬のようにフケが多く出る動物ではありません。成猫でフケが増えた時には、皮膚に問題があるか内側に隠れた病気がある可能性があるので、見逃してほしくないサインです。
この記事では、愛猫にフケが出た時にはどうすれば良いのか、原因ごとの対処法などを解説しています。正しい対処が遅れると悪化することもあるので、猫のフケについてよく知っておきましょう。
目 次
猫のフケについて
猫は全身を熱心に毛づくろいして清潔に保っているので、フケが目立つことが少ない動物です。
猫のフケが増えているように見えるのは、フケが増えるような皮膚の病気があるか、あるいは猫がきちんと毛づくろいが出来ないような不調があるか、のどちらかであることが多いです。
ではまず、問題があるフケと、心配の無いフケの見分け方から解説していきますね。
猫の問題ないフケと心配なフケの違い
<猫の問題ないフケの特徴>
- 全身に出る
- 一時的
- 緊張やストレスがかかっている時に出る
このようなフケは病的なものではないので、安心して良いでしょう。猫は緊張やストレスがかかると、一時的にフケが多く出てきたように見えます。
よく見かける問題のないフケの代表例は、診察台の上に乗った猫のフケです。診察台の上に乗せられて、飼い主さまに撫でられているとフケが全身から落ちてくる猫がよくいます。物凄いストレスがかかっているのか、大量のフケが出ることがありますが、家では出ていない一時的なものであれば問題ありません。
問題ないフケの対処法、取り方
- 猫自身が毛づくろいできるので何もしなくても大丈夫
- 気になる時はタオルで清拭を
- 拭いてもまたすぐにフケが出るなら心配なフケかも
基本的に、問題ないフケは猫自身で毛づくろいをして、すぐにキレイにしてしまうので対処をしなくても大丈夫でしょう。気になるときには、濡らしたタオルを絞って全身を清拭してもらえば十分です。
逆に一度しっかりと拭き取ったのにまたすぐにフケだらけになる、ということであれば、それは一時的なフケではない病気の可能性があるフケということになりますので、注意が必要です。
病気が考えられる猫のフケ
病気の可能性がある猫のフケは、問題のないフケと違って一時的ではなく、持続して出ていることが多いでしょう。まずは心配なフケの原因と特徴について解説していきます。
1、カビ(真菌)感染による猫のフケと特徴
猫にフケが出ることは少ないので、部分的にフケが多く出るという症状であれば最初に疑うのはカビ(真菌)の感染です。人にも移る人獣共通感染症で、皮膚糸状菌症とも言います。
- 部分的にフケが出る
- 耳や鼻、手足、シッポに出る
- 脱毛もみられる
- 子猫や老猫に出る
- 痒みは無いのに広がる
このフケの特徴は、全身ではなく部分的、耳や鼻、手足の先や尻尾にフケと脱毛が出る所です。つまり体幹部にはあまり発症しません。痒みもあまりなく、フケと禿げがじわじわと広がります。感染するのは子猫や老猫など、免疫力の弱い猫というのも特徴です。
猫の部分的な禿げとフケを見つけたら要注意!見逃すと、人にも抗真菌薬を投与しなければならない状況になります。
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2、歯周病や口内炎による猫のフケの特徴
猫のフケが増える原因は、どちらかと言えば皮膚に問題があるというよりも毛づくろいが出来ないような病気が原因になっていることが多くあります。
その代表例が歯周病や口内炎です。
- 全身にフケが多くある
- 急にではなく、徐々に増える
- 一度キレイに拭き取ってもまたフケが出る
- 中高齢猫に多い
- 口臭が強い猫に多い
つまり、毛づくろいをしたくても、口が痛くて出来ない猫はフケが多く出たままになってしまうのですね。食欲不振があって、前足にごそごそとした毛束がついている時には、歯周病や口内炎を疑いましょう。これが原因のフケでは、いくら被毛のケアをしても何の効果もありません。原因である歯周病と口内炎の治療をすることが大切です。
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3、持病の悪化によるフケの増加の特徴
高齢の猫にはフケが増える傾向にあります。関節炎による痛みがあって、あまり体を動かしたくない猫であったり、腎臓病や糖尿病などで常に脱水傾向にあることが原因です。
- 中高齢猫に多い
- 全身にフケが多くなる
- 関節炎の可能性
- 腎臓病の可能性
- 糖尿病の可能性
この場合も、フケが急激に増えたということではなく、体調不良が根底にあって毛づくろいがあまり出来ていない状況です。中高齢の猫でフケが増えて、お水をよく飲むようになった、という時には一度血液検査などの健康診断を受けた方が良いでしょう。
この場合も問題は猫の体調にあるので、フケが多いからと言って無理矢理にシャンプーやブラッシングを頻繁にするとストレスから持病が悪化してしまう危険性があります。特に抵抗力が下がっている猫をシャンプーするのはやめましょう。
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4、フケに見える猫のシラミ
保護した子猫の全身にフケがたくさんついてる!そんなときは、フケではなくネコハジラミかもしれません。
- フケに見える
- 保護された子猫に多い
- 完全室内飼いの成猫に急に出たりはしない
- あまり痒くはない
- 人にもうつらない
- 消化管内寄生虫を媒介する
ネコハジラミは、血も吸わず皮膚に傷もつけないので、猫にとってそこまで悪い寄生虫というわけではありませんが、消化管内寄生虫を猫にうつすことがあるのでやはり駆虫が必要でしょう。ネコハジラミは猫にしか寄生しないので、その点は安心ですが、子猫に白い小さな動くものがついているのは、心理的に無理な人が多いのではないでしょうか。
また室内飼育をしていて、外に出たことが無い猫にネコハジラミがつく可能性はゼロに近いです。ただ新しく保護猫を家族にした時には、必ず駆虫薬を投与してから先住猫と会わせるようにしてください。
動物病院で処方されるノミ・ダニ駆虫薬でしっかりと駆虫できるので子猫を保護したら動物病院へ連れていきましょう。
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病気が原因のフケの対処法
問題のあるフケの特徴があれば、すぐに動物病院にいくことが大切です。家での対処が逆効果になることが多く、治療の開始が遅くなるほどどんどん悪化してしまうでしょう。
何が原因かを動物病院で診てもらう
カビが原因なら抗真菌薬を投与する
歯周病や口内炎が原因なら、歯科処置も検討
持病の悪化が原因であれば、持病を治療
猫は病気を隠しがちなので、病気のサインでもあると覚えておきましょう。
アレルギー性皮膚炎で猫にフケは出る?
猫はアレルギー性皮膚炎でフケは増えません。アレルギー反応によって痒みが出ると舐めることが多くなるため、もしフケが出てもキレイに舐めとってしまうからでしょう。
フケは医学的な用語にすると鱗屑(りんせつ)と言いますが、教科書的なものでも猫のアレルギー性皮膚炎の特徴として鱗屑は出てきません。
猫のアレルギー性皮膚炎に多いのは、赤みのある湿疹(ブツブツしている)や舐め壊しによる脱毛、唇や目の周りの腫れです。
猫のアレルギー性皮膚炎の特徴
- 左右対称性の痒みが多い
- 粟粒性皮膚炎(赤いブツブツ)
- 舐め壊しによる脱毛、ハゲ
- 唇や目の周りの腫れ
- フケは増えない
またアレルギー反応の原因によって、皮膚病変の位置も変わります。粟粒性皮膚炎(赤いブツブツ)の出ている場所によって、ある程度の原因が分かることが多いです。
<アレルギーの原因による皮膚炎の場所の特徴>
・ノミアレルギー:背中とお尻が多い
・食物アレルギー:首、顔、頭
・蚊アレルギー:鼻梁、耳
白い猫の光過敏症でも耳先や鼻先に症状が出ます。
猫はアレルギーに反応する細胞(肥満細胞)が肺と頭部の皮膚に多く分布しているので、人や犬のように全体の皮膚にアレルギー反応が出ることが少ない動物です。
犬では皮膚バリアの破綻によってフケが多く出るアレルギー性皮膚炎が多いですが、猫では全身的に皮膚バリアが破壊されるようなことはごくごく稀なので、アレルギー性皮膚炎でもフケは増えないのでしょう。
病気以外の猫のフケ
病気ではなく、生まれながらの特性のためにフケが多めになる猫について紹介していきます。愛猫に当てはまるかどうか確認してみましょう。
黒い猫
単純な話ですが、黒い毛色の猫は白いフケが目立ってしまいます。そのため、同居の黒くない猫と比較するとフケが多いように見えてしまうことがあるでしょう。
それでも、きちんと自分で毛づくろいをしていれば「多い」とは感じることは少ないので、今までよりもフケが増えた時には病気のサインかもしれません。
長毛種の猫
長毛種の猫は、自分の毛づくろいだけでは被毛の管理が不十分になることがあり、人のブラッシングが必須であることが多いです。ブラッシングが苦手な猫の場合は、毛玉ができてしまってフケが溜まっているケースもあり、皮膚病になることすらあります。
長毛種の猫であれば、毎日少しずつのブラッシングを、猫が嫌にならないようなペースで続けましょう。
短頭種の猫
世間では鼻ペチャ、ぶさかわなどと言われ愛されている短頭種の猫は、うまく毛づくろいが出来ないケースがあります。その結果フケが目立つことがあるでしょう。代表的な品種としては、ヒマラヤン、ペルシャ、エキゾチックショートヘアーです。特徴的な顔の構造のために、飲水や食餌も苦手な猫が多いです。
病気ではないフケが目立つ猫の対処法
黒猫
黒猫でも毛が短ければ、そこまでフケが多いと感じることはあまりないでしょう。
増えた時には動物病院で健康状態を確認してもらうことがお勧めです。
長毛種の猫と短頭種の猫
毎日のブラッシングが基本ですが、毛が引っ張られて嫌がってしまう場合は、毛玉だらけになる前に全身を短くカットしてもらうのが良いでしょう。ブラッシングの手間も少なくなり、猫の負担軽減にもつながります。
猫のフケの予防法
特に長毛種の猫は、フケと毛玉が出る前に予防することが大切です。放置した毛玉が全身を覆って、フケだらけになったことのある猫は、半年か年に1度の全身カットが良いでしょう。
ただ猫の全身カットは実施できる施設が少ないので、まずはトリミングサロンか動物病院で実施が可能か確認するのがおすすめです。
病気からくるフケについては、発生を予防することは難しいですが、持病を治療することによってフケも減ってくるでしょう。
Q&A
フケのある猫に使って良いシャンプー、使ってはいけないシャンプーはありますか?
猫用あるいは動物用と書いてあるものは大丈夫です。人用シャンプーの中には、猫に中毒を起こす物質が入っていることもあるので使わないでください。
猫のシャンプーの頻度はどのくらいがいいでしょうか?
健康な猫には基本的に全身シャンプーは不要です。シャンプーで一時的にフケを流しても、すぐに元通りにフケが出てくることもあります。また猫は乾燥地域に生きる動物だったために、水に濡れることをストレスに感じることが殆どです。シャンプー剤の匂いが自分に付くこともストレスとなるので、皮膚病で獣医師の指示がある場合以外はあえてしなくて良いでしょう。
まとめ
猫のフケは必ずしも病気ではありません。一時的で全身に発生するものであれば、大きな問題はないでしょう。部分的にフケが増える、取り除いてもどんどんフケが増える、そんな時は病気が隠れているかもしれません。
原因にはカビや口内炎、腎臓病などの慢性疾患が隠れているかもしれないので要注意です。ただし生まれつきの特徴からフケが多い猫もいるので、愛猫がその特徴にあてはまるかも確認してみてくださいね。
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