【獣医師執筆】犬猫のノミ・ダニ対策と見つけた際の対処法、予防などを詳しく解説。人間への影響は?

【獣医師執筆】犬猫のノミ・ダニ対策と見つけた際の対処法、予防などを詳しく解説。人間への影響は?

2023/3/29

犬猫のノミやダニは、暖かい時期になると吸血行動を開始するのを知っているでしょうか?
ノミは大体18度から、マダニは大体15度から活発に活動すると言われ、東京であれば春頃から要注意です。とはいえ、犬猫を迎えたのが真冬であれば、あとでいいやと忘れがちに。
しかしこれは、愛犬と愛猫のみならず人の健康にも関与すること。この記事で、ノミ、ダニの危険性や症状、予防について、しっかりと理解しましょう。

獣医師
【執筆医】山田 あさか
獣医師

ノミ・ダニの種類と特徴、主な症状

犬の寄生虫のシルエット

犬と猫に寄生するノミとダニには色々な種類があり、感染した時の症状もそれぞれに異なります。

1)イヌノミ、ネコノミ

イヌやネコと名前がついていますが、それぞれ犬にも猫にも感染します。そして近年の犬猫につくノミの大半が、ネコノミです。

ノミに刺された部位は、小さな湿疹ができて赤みと痒みが出ますが、少数のノミ寄生では気付かれないことも多いでしょう。

ノミアレルギーを発症してしまうと、小さなノミの糞に接触したり、1回ノミに刺されたりしただけで、全身に湿疹と強い痒みが出てしまうため、犬猫はとても辛い状況になります。

2)マダニ

マダニは吸血時間が長く、数日から1週間ほど犬猫の身体にくっついたまま、ゆっくりと吸血しています。

吸血時に強い痒みは無いようなので、犬猫の毛の中に隠れ目立たないと気付きにくいです。大半は、ダニが丸々と太り目立つ状態になって気付くことが多いでしょう。

3)イヌミミヒゼンダニ

子犬の時期に、赤黒い耳垢が多く出る場合に疑われるのが、イヌミミヒゼンダニへの感染です。
耳ダニ、耳ヒゼンダニ、耳疥癬(みみかいせん)と呼ばれることも多く、吸血するだけでなく犬の耳の皮膚にもぐりこんで強い痒みを引き起こします。

大量の黒い耳垢が出て、犬がしきりと耳を掻いたり頭を振るという症状が出て、通常の耳掃除では改善されないのが特徴です。

   

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4)ニキビダニ

健康な犬猫でも、普通に毛根に寄生しているのがニキビダニで、免疫力がしっかりとしている状態では殆ど悪さをしていません。

しかし免疫力の低い子犬の時期や、何らかの原因で犬猫の免疫力が低下すると、異常にニキビダニが増えてしまい強い痒みが出てきます。

顔や手足の関節部に痒みが出て被毛が薄くなっている時は、ニキビダニがいないかの検査を実施します。

5)イヌセンコウヒゼンダニ

犬疥癬(いぬかいせん)とも呼ばれるダニです。皮膚を食べて穴を作って増えていくので、感染した犬はとても強い痒みを感じます。

耳や顔、身体の柔らかい皮膚の部分に多く発症し、皮膚状態の明らかな変化や大量のフケと脱毛がみられます

初期感染では症状が確認できないことが多く、感染後1-2週間以上たってから気付くことが多いでしょう。

感染経路

PORTRAIT HAPPY JACK RUSSELL DOG WALKING AND PLAYING IN A SPIKE FIELD.

1)イヌノミ、ネコノミ

感染している動物と触れ合うことや、お散歩中の草むら、生活環境中にノミが潜んでいて感染することが殆どです。

外猫と触れ合う機会や、外猫が出入りする環境では、ノミやノミの卵がある可能性が高くなるので感染リスクも高くなるでしょう。

2)マダニ

マダニは草や低木の葉の先で、体温が高い動物が通るのを今か今かと待っています。
草むらや林のなかを散歩コースにしている犬には感染リスクが高いでしょう。

猫も外に遊びに行く習慣があったり、他の外猫と触れあう環境にある場合にはマダニに寄生されやすくなります。

3)イヌミミヒゼンダニ

基本的には、感染している犬との接触が原因で、親犬から子犬への感染が多いです。
愛犬が罹患している場合は、お手入れ用品やベッド、おもちゃなどに、成虫や卵が残らないよう、こまめに洗いましょう。またドッグランなど、たくさんの犬が集まる場所はできるだけ避けましょう。

4)ニキビダニ

基本的に、子犬や子猫の時期に母親と接触することで感染すると言われています。

5)イヌセンコウヒゼンダニ

感染した動物との接触や、感染した動物のフケが落ちている場所で数時間ほど滞在すると感染のリスクが高くなります。

ノミやマダニを見つけた際の対処法

ノミやマダニが愛犬や愛猫に寄生しているのを発見した際は、焦らずに動物病院に連絡しましょう。

ノミ

Fleas on the surgery area from a male cat before during the neuter surgery

ノミは動きが早く動物の毛に隠れて活動しているので、少量の寄生では飼い主さんは気付いていないことが殆どです。気づいたときには、基本的に大量のノミが寄生しているでしょう。

こうなってしまうと、市販のノミ駆除薬やノミ取りシャンプーで駆除しきれるものではありません。動物病院で、処方箋が必要な、充分な薬用量が入ったノミ駆除薬を付けてもらいましょう。

マダニ

Help clean ticks from dogs.

皮膚にくっついている吸血中のダニを、自分で何とかしようとするのは止めましょう。
マダニは顎をしっかりと皮膚に差し込んでいるので、無理に引っ張るとマダニのアゴが皮膚の中に残ってしまって痒みの原因になるためです。また、体内に多量の卵を持っていることがあり、ヘタにつぶすとなかから卵が出てくる可能性もあります。

   

マダニに気付いたら、まずは動物病院に行き、特別なピンセットを使って取り除いでもらうか、マダニ駆除薬を投与してもらい、24時間以内に自然に落ちるのを待ちましょう

   

その他のダニは肉眼では見ることができません。疑わしい症状が出た場合、早急に動物病院へ相談しましょう。

予防法

Closeup of a female veterinarian giving a pill to a brown labrador in a clinic

基本的には、動物病院でのノミ、マダニ、ヒゼンダニの予防がメインとなります。
ニキビダニは完全に駆虫することは困難であり、完全に駆虫する必要性も低いためです。

だいたいのノミダニ予防薬は、月に1回の投与であることが多いです。
食べるタイプや、背中に薬液を垂らすタイプがあり、それぞれメリットとデメリットがあるので愛犬や愛猫の性格に合ったものを選びましょう。

   

また、ペットショップやインターネットで売られている予防薬は、薬効成分が少量なので、大量寄生されている時や緊急性のあるケースでは不十分でしょう。

これはダメ!NGな対処法と予防法

   

自力で取り除こうとする

ノミダニを発見した時にやってはいけないことは、指でつぶしたり、愛犬や愛猫の毛を掻き分けて1匹1匹取り除こうとすることです。ノミダニは、人にも寄生して吸血するので、自宅でご自身で取り除こうとするのは危険です。

      
決められた用法と用量を守らずに、予防薬を使用する

上記もNG行為です。薬用量が少なければ、予防効果が足りずにノミダニの寄生が発生してしまいますし、多すぎれば副作用が出る可能性が高くなります。

マダニが媒介する病気と初期症状

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マダニに吸血されることによって感染する病気はとても多く、人にも感染するものが多いので正しい知識をもっておきましょう。
現在、把握されているマダニ媒介性の病気は以下のものがあります。

1)SFTS(重症熱性血小板減少症候群)

「SFTSウイルス」をもった動物を吸血したダニに吸血されることによって、感染が成立します。
犬猫そして人にも感染し、元気や食欲がなくなり、発熱します。
ダニ以外に、感染動物同士や感染動物から人へ感染する可能性もあり、致死率の高い危険な病気の1つです。

2)日本紅斑熱(にほんこうはんねつ)

「リケッチア」という微生物をもったマダニに噛まれることによって、人は発症します。人が日本紅斑熱を発症すると、高熱、倦怠感、頭痛、全身的な発疹(紅斑)がでますが、犬猫では症状ははっきりと出ません。

3)ライム病

「ボレリア菌」を持っているマダニに吸血されることで感染し、人の場合、遊走性紅斑(ゆうそうせいこうはん)という特徴的な赤みが、刺された箇所に出ます。
犬猫では症状がでることはほとんどありませんが、元気食欲の低下が現れることが稀にあります。

   

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ノミが媒介する病気

1)瓜実条虫(うりざねじょうちゅう)

サナダムシとよばれる、条虫の一種である瓜実条虫は、まずはノミの体内で成長し、毛づくろいなどで犬猫がノミを食べることで寄生、体内で成長を始めます。

寄生されてもあまり症状が出ないですが、犬猫のお尻やウンチに米粒のような白いものがついていることで感染に気付くことが多いです。また、人にも感染し、トイレで白いきしめんのようなものが出てきて驚愕する、というケースもあります。

2)猫ひっかき病

「バルトネラ・ヘンセレ菌」をもったノミに寄生された猫に、咬まれたり引っ掻かれた際、人の傷がひどく化膿したり、近いリンパ節が以上に大きく腫れるという症状が出ます。

猫はこの菌を持っていてもなんの症状もないので、どの猫がこの菌を持っているのかは分かりません。

リンパ節の異常な腫れによってリンパ腫と間違われることもあるので、リンパ節が腫れた時にはその前に猫に咬まれたり引っ掻かれたりしたことを医師に伝えるようにしましょう。

Q&A

ノミやダニを見つけたら、洋服やベッド、カーペットも捨てた方が良いでしょうか?

可能であれば廃棄したほうが早くノミダニを除去することができますが、しっかりとノミダニ予防薬を定期的に投与するようにすれば一般的な洗濯や掃除でも十分に効果があります。

ノミやダニの卵は目で見えますか?

マダニの卵は目で見える大きさですが、ダニの卵は顕微鏡でなければ確認は難しいでしょう。

ノミやダニは自然にとれますか?

ダニは3日~10日の長さで皮膚に食い込んだまま吸血しますが、その後には身体から離れます。ノミは基本的にはその動物の被毛に隠れて一生暮しているので、自然には取れないでしょう。
ダニも一度は自然に取れても、暮している環境中に幼ダニやダニの卵が環境中に沢山存在することになるので、再度に寄生されてしまうことが殆どです。

ノミダニの予防は何月から何月までするべきですか?

吸血するかどうかは、気温によって変化しますので、お住まいの地域の暖かさによって予防時期も異なります。
南の方の地域で、年中暖かいということであれば一年中の予防を推奨していますし、気温が低い時期が長い地域では予防時期も短くなります。
関東では平均的に5月~11月の期間を予防シーズンとしているところが多いですが、地域によって差があるので、かかりつけの先生に確認するのが正確です。

完全室内飼育の猫でも、ノミやダニの予防は必要でしょうか?

若い猫では、その好奇心から脱走したり庭までは出るという猫も多いので、外に出る機会がある猫には予防は必要です。
本当に家から一歩も出ずに、今までノミダニに感染したことがない、他の猫ともまったく交流しない、他の猫のいる場所にも行かないということであれば、ノミダニに感染するリスクとしてはかなり低いので、絶対に予防が必要というわけでは無いでしょう。

市販の予防薬と動物病院の処方薬とでは、何が違うのでしょうか?

市販で売られているものは、薬用量が低いので効果が弱いことがあります。
またノミ取首輪などのグッズでは全身への効果はないので、感染予防が難しいことも多いでしょう。
動物病院で処方されるノミダニ薬には、お腹の寄生虫も一緒に駆虫してくれるものもあり、効果が複数あるのも良い点ですね。

ノミ取りシャンプーで毎月洗っていますが、それでも予防薬は必要でしょうか?

どのような製品なのかにもよるのですが、だいたいのノミ取シャンプー剤は効果がその時にしかありません。
動物病院で処方される予防薬は持続して効果を発揮するものが多いので、投与してからだいたい1カ月ほど予防効果があります。
毎日お外へ行くのであれば、1カ月に1日だけ予防するのでは意味がないので、持続して予防してくれるものが良いでしょう。

予防薬に副作用はあるのでしょうか?

予防薬もお薬なので過量投与したり、アレルギー体質でお薬が合わない時には副作用が出てしまう事があります。
動物病院で処方されるものは、薬として認可されているために安全試験も行われています。
多くの動物にとって安全に投与できる量をしっかりと調べてあるので、用法用量を守れば安全に使えることが殆どです。

まとめ

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犬猫のノミ・ダニの寄生は吸血による痒みだけでなく、人にも影響のある感染症をうつされる可能性もあるので軽視してはいけません。

ネコノミとイヌノミが主なノミの種類ですが、犬猫ともにネコノミに吸血されていることが殆どです。

ダニにはマダニ、ニキビダニ、センコウヒゼンダニなど沢山の種類がありますが、それぞれに全く違う生き物です。中でもマダニは人にも感染し、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)という致命率の高い感染症を媒介(ばいかい)しています。

市販のノミ・ダニ予防薬も効果のあるものもありますが、薬用量が少ないことが多いです。
確実に予防するためには動物病院から処方される予防薬を使用しましょう。

獣医師
【執筆医】山田 あさか

獣医師、猫専門家(Catvocate)取得。
これまでに小鳥、犬、猫を飼育し、現在はウサギと生活中。小動物(犬、猫、うさぎ、フェレット、鳥、ハリネズミ、チンチラ、レオパ)を日々診察する傍ら、正しい知識の発信にも尽力しています。

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