
【獣医師執筆】猫の顎ニキビ(猫ニキビ)はなぜできる?拭き方、 薬などのケア方法を詳しく解説
猫の顎にできる黒いブツブツ。顎ニキビ、猫ニキビなど様々な名前で呼ばれますが、正式には「挫瘡(ざそう)」という皮膚疾患です。この黒いブツブツの正体と対処方法について解説します。
目 次
猫の顎ニキビ(猫ニキビ)とは?

猫のどこにできる?
顎ニキビは、下顎の唇に近い側にできます。上を向くと非常にわかりやすいので時々チェックしてみましょう。
どんな症状?
軽度
軽度の場合は黒っぽいブツブツがあり、触ると少しざらつきを感じる程度です。無症状で、腫れや痒みもないことがほとんどです。
中度
症状が進むと黒いブツブツが目立ち、範囲も広がります。炎症が起こると赤く腫れた状態になり、顎を掻いたりこすりつけるしぐさが目立つようになります。炎症がひどくなると、皮膚が固くなることもあります。
重度
重度になると細菌が感染し、化膿する場合があります。さらに赤みや腫れ、痒みがひどくなり痛みが生じるようになると、触られることを嫌がります。痒がり掻いたり、こすりつけることが増えると脱毛が起こりさらに状態が悪くなります。
ノミの糞の可能性も

似たような黒っぽいブツブツが顎以外の場所にも見つかった場合は、ノミの糞の可能性もあります。ノミやマダニの予防を定期的に行っていない場合はなおさらです。
ノミの糞の場合は、水で濡らしたティッシュペーパーの上に置いておくと黒い粒の周囲に赤いしみが広がります。顎ニキビから採取できる黒い砂粒状のものの場合は赤いしみが広がりません。確認してみましょう。
猫ニキビの原因と対処法

猫ニキビの主な原因は、顎や口周辺にある分泌腺に分泌物がたまり炎症を起こすことです。ほかには、感染、アレルギー、お口周りの汚れ、ストレス、お手入れ不足、ニキビダニなどが原因になるといわれています。
原因1:感染
食べかすが付着したり、水を飲んだ後に湿ったままになったりすることで、口の周りは不衛生な状態になってしまいがちです。猫はお手入れの一環として顔を手で洗ったり、舐めてお掃除をしますが、食事の後に口の周りを舐めてきれいにしようとする姿を見ることも多いと思います。この時に口の中の細菌が付着しやがて感染する可能性があります。
また、プラスチック製の食器は徐々に傷が入り、傷の中で細菌やカビが発生してしまうことがあります。このような食器でフードを食べていると雑菌に口が触れてしまい感染の原因になる場合があります。さらに、後で触れますが、プラスチックなどに対してアレルギーを起こす猫もいます。
【対処法】
感染が起こる原因は様々ですが、対処法は清潔にすることです。食器をきれいに洗い、水は毎日取り換えるなどの、基本的な対策をまず行いましょう。お口の周りの汚れ、食器については後述します。
皮膚が赤くなり、痒がる場合は、投薬などの治療が必要ですので早めに動物病院で診てもらいましょう。
原因2:アレルギー
①日頃使用する食器が、プラスチックや金属製の場合、接触性アレルギーを起こすことがあります。
【対処法】
陶器やガラスの食器に変更して様子を見てください。
②口の周りを痒がる場合、同じアレルギーでも食物アレルギーの場合があります。顎ニキビが原因で痒がっているのか、食物アレルギーなのかは見分ける必要があります。
【対処法】
食物アレルギーの場合は、アレルギーを起こさない食材を使用したフードに変更する必要があります。
接触性アレルギーと食物アレルギーでは治療方法が異なりますので、動物病院で相談しましょう。
原因3:お口周りの汚れ
食物アレルギーとは別に、食事後の口の周りの汚れが猫ニキビの原因になることもあります。
まめにお手入れをする猫もいますが、汚れが残ったままになってしまうことも。特にウエットフードを食べた場合には、汚れが残りがちです。猫の性格も千差万別ですので、お口の周りに汚れが残っていないか時々チェックしてみましょう。
【対処法】
汚れが残りがちな猫の場合は、強くこすらないように気を付けて拭きとってあげましょう。
原因4:ストレス
猫は環境の変化に敏感で、引越しや新しいペット、家族構成の変化などに、ストレスを感じることがあります。敏感な猫の場合は、トイレやベッド、食器の変化などでもストレスを感じるようです。
ストレスがかかると抵抗力が落ちてしまい、体調が悪化、このような体調変化が原因になり、顎ニキビができる場合があります。
【対処法】
急に顎ニキビができるようになった場合は、環境の変化がなかったか確認してください。できるだけ急激なストレスがかからないようにしましょう。
<関連記事>
【獣医師執筆】猫のストレスサインを知ってチェック!原因とストレス解消法も解説
原因5:お手入れの不足
お口の周りはもともと汚れやすい場所です。さらに、猫自身でお手入れがしにくい場所でもあります。手や足を丁寧に舐めている姿はよく見かけますが、顎の下は見えないため、お手入れしにくい場所になります。しきりに寝床やソファーなどにこすりつけて拭いていたり、タオルなどに汚れが付着している場合はチェックしてみるとよいでしょう。
【対処法】
まずはまめにチェックして、食事後に口の周りが汚れたままになっていないか確認してください。汚れが付着する傾向がある場合は、やさしく拭きとってあげましょう。
原因6:ニキビダニ
ニキビダニは毛包(被毛の根本)に生息するダニで、常在している寄生虫です。健康な状態では積極的に悪さをするものではなく、ほとんど症状はありません。ストレスがかかったり、ほかの病気で体調不良が起こった際に、毛包の中で爆発的に増えて脱毛が起こります。通常、違和感はないようですが細菌感染などが起こってしまうと痒くなり、掻いたりこすりつけて状態が悪くなってしまいます。
【対処法】
顎ニキビを繰り返したり、なかなかよくならない場合は、動物病院でニキビダニの有無について検査してもらい、治療を受けましょう。
猫ニキビのケア方法、病院へ行く目安

実際に猫ニキビができてしまった場合、どのようにケアをすればよいのでしょうか。また、病院に行く目安となる症状にはどのようなものがあるのでしょうか。
軽度
黒い砂粒状のブツブツが少量あり、軽くこすると取れる程度であれば、まめに拭いて汚れを取るだけで構いません。
中度
黒いブツブツがたくさん出て腫れている場合は、ぬるま湯でふやかしたり、ベビーワセリン、ドライシャンプーなどを利用してふやかしてから拭きとってください。
完全に取り切れないとこすりたくなりますが、かえってひどくなりますので、NGです。
重度
赤く腫れて、痛みを伴う場合は、自宅でのケアを考えるよりは病院で診察を受けた方が良いでしょう。外用薬や内服薬での治療が必要です。
おすすめアイテム
ケアのときに、市販のお手入れ用ウエットティッシュを利用する方法もありますが、次のようなものもおすすめです。
・ベビーワセリン
・ドライシャンプー(ムースタイプ)
・顎ニキビ専用の拭きとりシート
やってはいけないケア

かえって悪化させてしまうケアをご紹介します。
人間のニキビ用市販薬
顎ニキビとは言いますが、人間のニキビとは異なります。人用のニキビ用市販薬は、使わないようにしてください。
歯ブラシなどでゴシゴシ擦る
顎ニキビはブツブツしているので、こすり落としたくなるかもしれませんがNGです。こすると刺激になりかえって腫れてしまい悪化させます。
特に、歯ブラシなどでこすると目に見えない傷が入り、細菌感染の原因になります。ヒリヒリした状態になると、猫自身がどこかにこすりつけたり掻いてしまって、ジクジクになることも考えられます。
アルコールなど、刺激の強いもので拭く
細菌感染なら消毒した方が良いと、アルコールで拭くのはNGです。痒みがあり、掻いたりこすりつけている場合は、刺激が強く、しみて痛がります。
消毒をしたい場合は、動物病院で使ってもよい消毒薬を処方してもらいましょう。
放っておいたら危険?

軽度の場合は、様子を見ながら拭きとっていくことで問題ありませんが、中度~重度になると放置していたら悪化することが多いでしょう。
細菌感染がひどくなると、熱を出してしまったり、膿が排泄されることも考えられます。痛みから食欲不振になってしまうこともありますので、早めに治療することが大切です。
動物病院での治療内容と費用の目安
症状により治療の内容が変わります。今回は、中度の場合を例にして、治療内容とおおよその費用の目安を紹介します。
・診察料: 1000円
・処置(消毒など): 1500円
・外用薬: 1500円
・内服薬: 1500円
(治療費については地域や病院によって異なりますので、目安にしてください。詳しくは、かかりつけの動物病院でお尋ねください)
Q&A
耳や内股、尻尾にも似たような黒いぶつぶつがあるのですが、同じニキビでしょうか?
顎ニキビが耳にできる割合は約16%ですので可能性はありますが、内股や尻尾の場合はノミの糞の可能性が高いです。
ノミの糞の場合は水で濡らしたティッシュペーパーの上に置いておくと黒い粒の周囲に赤いしみが広がります。顎ニキビから採取できる黒い砂粒状のものの場合は赤いしみが広がりません。確認してみましょう。
触ってみたら、ボコッとしこりになっています。ニキビの炎症?他の病気でしょうか?
顎ニキビの炎症がひどくなると皮膚が腫れてきますので、ボコッとした感じになることがあります。黒いブツブツがなくてボコッとしている場合は腫瘍や感染などの可能性がありますので、早めに動物病院を受診しましょう。
発症しやすい猫の特徴などあるのでしょうか?
猫種、性別、不妊手術の有無による発祥のしやすさはありません。どんな猫にも発症するといえるでしょう。
頑張って通院、ケアをしているのに1年以上治りません。どうしたらいいでしょうか?
治療を行っているにもかかわらず良くなる気配がないと悩みますね。治らない理由が必ずありますので、セカンドオピニオンを依頼するのも良いのではないでしょうか?
まとめ

今回は猫の顎ニキビについてお話ししました。黒いブツブツが顎にあると気になりますね。軽く拭く程度で簡単にとれるものは日頃のケアをしっかり行うことでカバーできると思います。しかし、痒み、発赤、脱毛、腫れがある場合は自宅でのケアのみでは難しいでしょう。早目に動物病院で診てもらいましょう。
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