【獣医師執筆】猫に生肉はあげちゃダメ!理由や症状を詳しく解説、鶏も豚も牛もNG

【獣医師執筆】猫に生肉はあげちゃダメ!理由や症状を詳しく解説、鶏も豚も牛もNG

2023/1/31

猫は元来肉食だし、自然な食事である生肉をあげてみたい。そのように考えている方もいるでしょう。しかし、生肉は猫に与えてはいけません。生肉を食べると、食中毒や寄生虫感染のリスクがあるからです。この記事では、ダメな理由、食べてしまった場合の対処法などを詳しく解説致します。

獣医師
【執筆医】やみぃ
獣医師

生肉は猫にあげちゃダメ

骨付き肉を食べようとしている豹

猫は肉食のため、生肉を食べることで直ちに健康に被害が出るわけではありません。しかし、猫に生肉はあげない方がいいでしょう。生肉には食中毒や寄生虫感染のリスクがあるからです。

もちろん、スーパーなどに流通している生肉は衛生管理を厳しくしていますが、火を通すことを前提に管理されています。猫に肉をあげたいときは、きちんと火を通して与えましょう。

生肉を食べた際の症状

  • 下痢
  • 嘔吐
  • 食欲不振
  • 元気消失
  • 脱水

   

もし食中毒や寄生虫感染をしていた場合、数時間から数日後に体調に変化があらわれます。特に免疫力の低い子猫や老猫では、重篤な症状が出ることがあります。

また腎不全などの腎疾患がある猫の場合、タンパク質を過剰にとりすぎてしまうと、症状が悪化する危険もあります。

もちろん必ずではなく、食中毒などを免れることもあるかとは思いますが、リスクがある以上、あげない方が安全です。

肉ごとの危険性について(牛、豚、鶏、馬、ジビエなど)

様々な種類の生肉

生肉には、様々な細菌や寄生虫がいます。ここでは、生肉の種類別に代表的なものを解説いたします。

1)牛肉

生の牛肉には、大腸菌がいる可能性があります。

   

大腸菌
正常時も腸内にいる細菌ですが、免疫力の低い子猫が感染すると、腸炎や敗血症を起こします。
成猫では、大腸菌の中でも、腸管毒素原性大腸菌(ETEC)や腸管病原性大腸菌(EPEC)などが重篤な症状の原因になります。

   

【症状】

子猫では嘔吐、下痢、敗血症がみられ、成猫では嘔吐、下痢を起こします。
また消化器症状以外にも、膀胱炎、子宮内膜炎、子宮内膜症、乳腺炎、腎炎、前立腺炎などの原因になります。

治療時は抗菌剤の投薬や脱水時には輸液を行います。

2)豚肉

生の豚肉には、旋毛虫やトキソプラズマという寄生虫がいる可能性があります。

   

・旋毛虫
筋肉内にいて、その肉を食べることで感染します。猫での感染報告もありますが、症状はあまり知られていません。人間では、下痢や筋肉炎、呼吸困難などを起こします。また日本では、人間で豚肉以外にジビエ(熊、鹿、猪など)肉からの感染例があります。
冷凍しても死滅しないことがあるため、注意が必要です。

  

・トキソプラズマ
トキソプラズマは寄生虫の一種で、全ての哺乳類(人間も含む)に感染します。猫では症状が出ないことが多いですが、人間への感染が問題です。妊娠中に感染すると、胎盤を通じて胎児に移行し、重篤な先天性トキソプラズマ症を起こすことがあります。こちらも、豚肉での感染の他、ジビエ(鹿、猪など)の感染報告もあるため、注意が必要です。

3)鶏肉

生の鶏肉には、カンピロバクターやサルモネラという細菌がいる可能性があります。人間でも食中毒を起こす細菌です。猫には症状が出なくても、猫の糞便の中に細菌が出て、人間への感染源になる可能性があります。

  
・カンピロバクター症
猫では不顕性感染(感染しているけど症状が出ないこと)が多いですが、若齢時やストレスによって症状が出ることがあります。
  

【症状】

高熱や粘液性・血様性下痢がみられ、継続することがあります。

自然に治ることも多いですが、治療する場合、抗生剤を使用します。また、脱水が認められる場合は輸液を行います。

    

・サルモネラ症
猫で症状が出ることはまれです。

  

【症状】

症状が出ると、発熱、下痢、脱水、腹痛などが見られます。治療には抗菌剤や脱水が認められる場合は輸液を行います。

4) 馬肉

生の馬肉には、住肉胞子虫という寄生虫がいる可能性があります。

  

・住肉胞子虫
人間では、下痢、嘔吐などの食中毒を起こします。猫では、感染した馬肉を食べることで腸内で増殖すると言われていますが、症状はあまり報告例がなく、無症状のことが多いようです。とはいえ未知の部分が多くリスクがあることには変わりありません。

5)ジビエ(熊、鹿、猪など)

ジビエは、家畜の肉と以下の点で異なっています。

・生産段階によって、飼育や衛生管理が全くされていない。
・食肉に加工するときに、獣医師による検査が行われていない。

そのため、どのような病気を持っているかわかりません。
前述したすべての細菌や寄生虫が存在する可能性がありますし、まだ知られていない病気を持っている可能性があります。

一例としては、サルモネラや旋毛虫、トキソプラズマ、住肉胞子虫などの感染報告があり、日本獣医師会ではジビエ肉について「ヒトも犬や猫等の動物も、生食は厳禁」と記しています。

自宅での対処法・応急処置

British Shorthair cat isolated on white. Surprised, wtf expression

猫が生肉を大量に食べてしまった場合は、すぐに獣医師に相談しましょう。
少量の場合は、数日猫の様子をしっかり見て、嘔吐下痢、食欲不振などの気になる症状が出た際は、すぐに獣医師へ連絡しましょう。

猫の場合、全く食べないことが数日継続するのはとても危険です。肝リピドーシスという、肝臓に過剰に脂肪が蓄積する病気になる可能性があります。亡くなることもある病気のため、入院管理が必要になります。猫の食欲不振は軽視しないようにしましょう。

   

<関連記事>

猫の脂肪肝(肝リピドーシス)とは

動物病院での検査、診療内容

下痢がある場合、便検査で細菌感染や寄生虫感染がないかチェックします。
元気や食欲があり比較的症状が軽い場合は、下痢止めや吐き気止めの処方で治療を開始します。
しかし、食欲不振や元気消失など全身症状がある場合は、重度の感染症などを疑い、血液検査やレントゲン検査、エコー検査などを実施し、その検査結果に応じて治療を行います。点滴や抗菌剤など、状況に応じて変わります。
しっかりと検査・治療した場合、内容にもよりますが、約3-4万円程度になるでしょう。
また、入院が必要な場合は更にかかりますので、約10‐20万円程度かかる場合もあります。

お肉をどうしてもあげたい時は

Canned food for cats or dogs in green metal bowl on wooden floor. Top view

猫は総合栄養食のキャットフードで十分な栄養が取れます。
それでも、どうしてもお肉をあげたい場合は、生肉ではなく、ゆでたささみなど必ず火を通したものをトッピング程度にあげましょう
食欲がない時は、ゆでたささみの汁をいつものキャットフードにかけると香りが立つので、食欲が出ることがありますよ。

Q&A

猫は肉食なので、生肉の方がいい、酵素が摂れると思っていましたが異なるのでしょうか?

確かに加熱によって失われる酵素があるため、生肉の方が酵素が摂れるという話もあります。しかし、それについての科学的根拠は存在しません。
むしろ、感染症、寄生虫症のリスクが高く、デメリットが大きいです。

ペット用の生肉などを扱っているお店もありますが、そのようなお店のお肉も危険でしょうか?

人間の食べる肉は加熱用であっても、食品衛生法により品質を管理されています。しかし、ペット用の肉はそのような決まりはないため、品質は保障されていません。基本的にはペット用の生肉でも与えることはおすすめしません。

まとめ

cat Food Take shape to footprint  isolate on white background

猫に生肉をあげることは、感染症や寄生虫症になる可能性があるため、やめてください。
免疫力の低い子猫や老猫では、重篤な症状が出ることがあります。また、猫には症状が出なくても、細菌や寄生虫が便中に出て、人間への感染源になることもあります。
猫は総合栄養食のペットフードのみで、十分に栄養を取ることができます。
猫自身の健康のためにも、飼い主様や周囲の人周りの人の安全のためにも、猫に生肉を与えないようにしてください。

獣医師
【執筆医】やみぃ

産休、出産を経て、現在は育児をしながら勤務獣医師をしています。学生時代は寄生虫の研究をしたり、野生動物関係のボランティアをしていました。

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