【獣医師執筆】猫は生クリームを食べても大丈夫?適量とデメリットについて、与え過ぎ注意!

【獣医師執筆】猫は生クリームを食べても大丈夫?適量とデメリットについて、与え過ぎ注意!

2022/10/31
獣医師
【執筆医】山田 あさか
獣医師

猫は動物性の脂肪とタンパク質が大好きなので、生クリームも大好きです。しかし、乳製品にアレルギーのある猫や、少量の乳糖にも反応する猫に与えると、吐き気や下痢などの症状が出るので要注意。

猫に生クリームをあげる前に、それが「純粋な生クリームなのか」の知識と適量、体調を崩すとどんな症状が出るのか、持病を持っている猫にあげて良いのかを知っておきましょう。

猫に生クリームをあげても大丈夫

デコレーション中の生クリームケーキ

猫は生クリームが大好き

「純粋な生クリーム」なら猫にとって毒になるものが入っていないので、食べても大丈夫。

また猫は犬や人よりも肉食性が強い動物です。つまり、穀物や炭水化物の消化はあまり得意ではなく、タンパク質や脂質の代謝が得意ということ。そんな猫なので、動物性脂肪の塊である生クリームは大好き。

ただし一口に生クリームと言っても、動物性脂肪だけで作られていないものも多くあるので注意が必要です。

<猫にあげてもいい、生クリームの正しい知識>

ポイント

生乳だけを原料にしている

動物性脂肪分が18%以上(ホイップされているものの場合は脂肪分35%以上)

添加物や植物性脂肪が入っていない

ケーキなどに使われているのは「乳等を主原料とする食品」が多いので注意

   

上記のような「生乳だけを原材料にしており、脂肪分が18%以上の生クリーム」であれば、猫にとって悪いものはほぼ入っていません。それでも、猫には不必要なほどの脂肪分が含まれているので、あげ過ぎれば体調を崩すので注意が必要です。

一般的なケーキなどに使われているクリームは要注意

また一般的なケーキなどに使用されている白いホイップクリームは、厳密に言えば生クリームではなく「乳等を主原料とする食品」です。植物性脂肪分や添加物、多量の糖分が入っているので、多くあげるのは猫の健康に悪いのでやめましょう。

猫は甘味を感じないので、砂糖は不要

猫は甘味を感じないので、砂糖の添加は不必要です。血糖値が上がるのは猫にとっても良くないので、砂糖は入っていないものが良いでしょう。

猫に生クリームをあげるメリット

スプーンで何かをもらう長毛猫

だいたいの猫は生クリームが大好きなので、ここぞという時のご褒美やお祝い、しつけやトレーニングには良いかもしれません。

また高齢期になって、持病があって毎日お薬を飲まなくてはいけない、体重がどんどん減っている、食欲が出ない、という時にも、生クリームが役立つことがあるでしょう。

<猫に生クリームを上げるメリット>

ポイント

猫が喜ぶ=ご褒美になる

投薬の手助けになる

食欲アップの一助に

食欲がない猫のカロリー補給に役立つ

   

ただし高齢期や持病のある猫にあげる時には、消化機能が落ちている可能性があるので、必ず担当の獣医師に確認してからあげるようにしてくださいね。

猫にあげる生クリームの適量

  • 明確な規定量は存在しない = 適量は猫それぞれの体質による
  • オヤツとしてなら小さじ1-2杯程度まで

   

ここでの生クリームは、動物性脂肪のみが入った生クリームです。
良く見かける人用にホイップされたクリーム(糖分や塩分がたっぷり入ったもの)の適量ではありません。人用の甘い生クリームであれば、小指の先ほどをあげる程度にしておきましょう。

オヤツや補食は、一日必要カロリーの10-20%程度までとされていますので、カロリーだけで計算すると4㎏の猫であればホイップされた生クリーム小さじ1~2杯程度が適量です。生クリームはカロリーが高い食品なので、ごく僅かでもオヤツ量をこえてしまうので注意です。

初めて猫に生クリームをあげる際の注意

今まで乳製品をあげたことがない、という猫であれば小指の先ほどの生クリームを与えてみて、下痢や吐き気などがおきないかを一日観察するようにしてください

乳製品で消化器症状が出たことが無いという猫であれば、オヤツの量として生クリームをあげることが可能でしょう。

<生クリームをあげない方が良い猫>

  • 他の乳製品で下痢や嘔吐がおきたことがある
  • 乳製品にアレルギーがある
  • 乳糖不耐性がある

   

もし愛猫が乳製品で下痢になったことがあるのであれば、少量の生クリームでもあげてはいけません。生クリームは乳糖が多い食品ではありませんが、乳糖に反応して下痢になる猫がいます。
また乳糖不耐性ではなく、乳製品へのアレルギーが原因かもしれないので、乳製品での下痢を経験しているようであればあげないようにしましょう。

生クリームを食べて、でる可能性のある症状

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  • 下痢
  • 吐き気
  • 食欲不振
  • 痒み
  • 目の周りの赤み
  • 呼吸が早くなる

   

下痢と吐き気が一過性で、1回ほどで終わったのであれば大きな問題にはなっていないでしょう。
逆に下痢と吐き気が複数回ある時や食欲不振がある時には、猫の体に大きな負担がかかっているので、動物病院で治療してもらう必要があります

また生クリームを食べたその日のうちに、痒み、目の周りの赤み、呼吸速迫の症状が出た時にはアレルギー反応を疑います。
特に食べて30分以内に上記のような変化があったときには、急性のアレルギー症状の可能性があるので、必ず動物病院に行くようにしてください。アレルギー反応で吐き気や下痢がでることもあるので、症状が出た猫は乳製品を避けた方が良いでしょう。

生クリームをあげないほうが良い猫の持病

  • 尿石症
  • 糖尿病
  • 皮膚病

これらの病気は、獣医師から処方される治療食によって健康を維持できている状態です。
だいたいの治療食は、その食餌とお水以外は口にしないことによって効果が最大に発揮されますので、あげないようにしましょう。

猫の尿石症と生クリーム

猫の尿石症は、尿中にシュウ酸カルシウム結晶やストルバイト結症が出てしまう病気ですが、食事中のカルシウム濃度とタンパク質量のバランスが大切です。
そこに、オヤツとして習慣的に生クリームをあげると、カルシウム濃度に大きな変化が出てしまうかもしれません。


<関連記事>

猫の尿石症(尿路結石症)について

猫の糖尿病と生クリーム

猫の糖尿病でも食事管理と体重管理、そして血糖値管理がとても大切なのですが、糖分入りの生クリームなどをあげたら全てが台無しです。
命に関わるケースもあるので、決められた治療食を決められた量で与えるようにしてくださいね。

猫の皮膚病と生クリーム

皮膚病の猫は、厳密には生クリームで大きな変化は起きないと考えますが、アレルギー性の皮膚炎が疑われる猫であれば、生クリームでも止めておいた方が良いでしょう。
せっかく良化していた皮膚症状が一気に悪化してしまうこともあります。

慢性腎不全の猫への生クリームはケースバイケース

  • 治療食で管理できているなら、生クリームはダメ
  • 投薬にどうしても必要ならOKが出ることも
  • 食欲がまったく湧かなくて、生クリームだけ食べるという時にはOKが出ることも
  • 下痢や吐き気が出るのであれば、生クリームはダメ

猫の慢性腎臓病は、中高齢の猫に見られる最も多い病気です。
腎臓病の猫に生クリームをあげても良いか?と聞かれたら、獣医師としては「できればあげないで下さい。」と答えます。なぜなら、生クリームでもし下痢になってしまうと、腎不全の大敵である脱水を引き起こしてしまうからです。

更には、せっかく腎臓病食を食べてもらっているのに、生クリームを食べることによって、食餌中のカルシウムやタンパク質バランスが崩れてしまうでしょう。そのために、なるべくなら生クリームをあげないように、と伝えます。

しかし慢性腎不全の状況によっては「下痢や吐き気などなければ、少量だけはあげても良いです」と伝えるケースもあります。慢性腎不全では食欲が低下ぎみになり、どうしても体重が減ってしまうことが多いからです。つまり治療食も食べたくないし、キャットフードも見向きもしない、でも生クリームなら舐めてくれる、という状況であれば、獣医師から生クリームの許可が下りることがあるでしょう。

<体重が落ちていく猫に推奨される食餌>

  • 1位:治療食
  • 2位:総合栄養食
  • 3位:一般食
  • 4位:人用の食材

   

慢性腎不全の猫の体重を維持することは、余命を延ばすことでもとても大事な要素とされています。
なので、獣医師は体重を維持するために、色々なお薬や治療食を処方しますが、それでも体重が減っていくことが多いのが現状です。

出来るだけ治療食を、ダメならキャットフードの総合栄養食を、無理ならキャットフードの一般食、それも食べなければ人用の食材でも良いので食べてもらいたい、と考えます。

生クリームは第4位の人用の食材になりますが、毒性などはなく猫の嗜好性は良い食品です。
体重維持のために、最終手段として活用できるケースもあります。

   

<関連記事>

猫の慢性腎不全について

まとめ

cupcake isolated in pink background

猫は少量であれば生クリームを食べても大丈夫です。

ただ人用の生クリームには糖分や塩分、添加物も入っているのであまりお勧めできません。ごく少量を時々あげるだけに留めましょうね。

生クリームは猫の楽しみやトレーニングのご褒美、毎日の投薬のストレス軽減に役立つことが多いです。しかし今までに乳製品で吐き気や下痢が出た猫であれば、生クリームもあげるのはやめましょう。尿石症や糖尿病、皮膚炎のある猫でも生クリームをあげるのは危険です。
また基本的には病院で処方された治療食を食べている猫は、生クリームをあげる前に担当の獣医師に確認を取ることが大切。食欲が出ずに痩せていく慢性腎不全の猫であれば、獣医師から少量の生クリームが許可されることがあります。

獣医師
【執筆医】山田 あさか

獣医師、猫専門家(Catvocate)取得。
これまでに小鳥、犬、猫を飼育し、現在はウサギと生活中。小動物(犬、猫、うさぎ、フェレット、鳥、ハリネズミ、チンチラ、レオパ)を日々診察する傍ら、正しい知識の発信にも尽力しています。

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