
【獣医師執筆】猫にエビはあげちゃダメ!症状や対処法を詳しく解説
「猫にイカを与えると腰を抜かす」という話を聞いたことはありませんか?
これは、エビやイカをはじめ生の魚介類や甲殻類などに多く含まれる酵素が原因で起こる症状、嘔吐や下痢などの消化器症状を例えていると言われています。
猫がエビを食べてしまった場合、どんな症状が起こり、どのような対処すべきかを獣医師が詳しく解説します。
目 次
猫にエビはあげちゃダメ!生のエビは絶対NG

エビは猫には与えないほうがよい食材です。特に、生のエビは絶対に与えないようにしましょう。
猫にエビを与えてはいけない理由
理由1、チアミン(ビタミンB₁)欠乏症を引き起こす可能性がある
エビに多く含まれているチアミナーゼは、チアミン(ビタミンB₁)の分解酵素で、大量に摂取するとチアミン(ビタミンB₁)欠乏症を引き起こす可能性があります。
チアミナーゼは、エビをはじめ、生の魚介類や甲殻類に多く含まれています。
チアミンとは
チアミン(ビタミンB₁)は、炭水化物の代謝、脂質代謝、アミノ酸の代謝などに関わる物質で、猫もわたしたち人間も体内で合成することができません。
また水溶性ビタミンの一種で、摂りすぎても余剰分は尿中に排泄されてしまうため、必要量を毎日摂取しなくてはなりません。そのため、ほとんどの市販ペットフードには充分量のチアミン(ビタミンB₁)が添加されています。
特に猫はチアミン(ビタミンB₁)必要量が多く、成猫の維持期のチアミン(ビタミンB₁)最小栄養所要量は成犬の約6倍と言われています。
チアミン(ビタミンB₁)欠乏症とは
チアミン(ビタミンB₁)欠乏症は、総合栄養食をしっかり食べて食欲がある状態ではあまり起こりません。しかし食事の質が急に悪くなる、消化吸収能力の低下などにより、他のビタミンよりも早期に現れる栄養性欠乏症と言われています。
また猫は魚を食べる機会が多いことが考えられ、チアミナーゼを多く含む食品を多量に摂取する可能性があることで、チアミン(ビタミンB₁)欠乏症になりやすいとも言われます。
チアミン(ビタミンB₁)欠乏症の症状
- (初期)食欲低下
- 眼振
- 心肥大
- 運動機能障害
- けいれん発作
- 多発性神経炎
- 不全麻痺
などの重篤な症状になります。
この様な症状が見られた場合には、動物病院での迅速な治療が必要です。
加熱することで不活性化
チアミナーゼは酵素の一種なので加熱することで不活化します。
チアミン(ビタミンB₁)欠乏症を避けるためには生のエビは与えないようにしましょう。また加熱した場合も、アレルギーなどの他のリスクもありますので与えないほうがいいでしょう。
理由2、嘔吐や下痢などの消化器症状を起こす可能性がある
猫は完全な肉食動物です。唾液中に糖質を分解する酵素が含まれていないうえに消化管が短く、繊維質が多く含まれる炭水化物の消化はあまり得意ではありません。
特にエビの殻や尾の固い部分には動物性の炭水化物であるキチンが多く含まれているため消化が悪く、嘔吐や下痢などの消化器症状が生じる可能性があります。
理由3、アレルギー症状が起こる可能性がある
エビは甲殻類アレルギーをはじめアナフィラキシーの様な急性のアレルギー反応や、少量でも長期間食べ続けることで消化管や皮膚などに慢性的な炎症が起こる食物不耐性(慢性のアレルギー症状)が起こりうる食べ物です。
アレルギーの症状
- 痒み
- 湿疹
- 嘔吐 など
さらにアナフィラキシー(急性のアレルギー症状)の場合は、呼吸困難、痒み、湿疹、嘔吐などの症状が、食べてからすぐに発症することが特徴です。
過去エビ以外の甲殻類を食べて同様の症状が出た場合は、特に注意が必要です。
一度食べて何の症状も見られなくても、二度目や三度目に発症する場合もあります。
猫に危険なエビの量について

どれぐらいの量のエビを食べたら発症するのかは、猫の体重や体調、食べた量によって異なるため不明です。
エビに限らず猫の身体によいとされる食材であっても、毎日繰り返し食べ続けると慢性的な皮膚の痒みや消化器症状といった食物不耐性の症状が出てくる可能性があるので注意しましょう。
食べてしまったときの、自宅での対処法・応急処置

すぐに動物病院へ行くべきケース

生のエビを大量に食べてしまった場合
適切な治療が行われない場合は2~3日で死に至ることもあり、早期発見と治療がとても大切です。
与えた後にアナフィラキシー(急性のアレルギー症状)が見られた場合
上記は緊急を要するので、すぐに動物病院に連れていきましょう。
NGな対応

自宅で無理に吐かせる
食道炎を起こす可能性があり、命に関わるので絶対にやめましょう。
動物病院へ行った方が良いケース

2日以上軟便が続く場合
丸1日以上全く何も食べない場合
上記の場合は早めに動物病院を受診することをお勧めします。
特に肥満傾向がある猫は丸2日以上何も食べないと、肝リピドーシス(脂肪肝)になり肝機能が低下し、命に関わる場合があるので注意が必要です。
食欲不振などで十分に栄養が摂れていない状態で、生のエビを与えてしまった場合も要注意です。
診察の際に正確な情報を獣医師に伝えるために「いつ、どれくらいのエビの量を与えたのか」をメモしてから受診するようにしましょう。
経過観察でも良いケース

少し便が緩い程度で、食欲も元気もあり軟便以外の症状がない場合
上記の場合は、食事量を普段与えている量の半分以下に減らして与え経過観察をしましょう。
動物病院での検査と治療
①検査
症状に応じて血液検査やレントゲン検査を行います。
②治療
催吐処置は大量に誤食してすぐの場合以外は基本的に行わず、点滴治療や制吐剤、下痢止めの投与などの症状を抑える治療を行います。
アナフィラキシー(急性のアレルギー症状)の場合
命に関わりますので、緊急でステロイドや抗ヒスタミンなどを投与し、症状によっては入院による点滴治療を行う必要があります。
チアミン(ビタミンB₁)欠乏症の場合
早期発見と治療がとても大切です。適切な治療が行われない場合は2~3日で死に至ることもありますが、眼振などの神経症状がみられてから24時間以内にチアミン投与治療を行えば、すべての症状は改善します。
よくある質問Q&A
猫が生のエビを舐めてしまいました。すぐに病院に連れて行った方がよいでしょうか?
健康な猫であれば舐めただけでは大きな問題は起こりません。
しかし猫の体調によってはアナフィラキシー症状が起こる場合があるので、顔面の腫れや呼吸の変化などが起こらないかよく観察しましょう。
猫のおやつにエビが入っているのですが、大丈夫でしょうか?
猫のおやつに含まれているエビは、加熱・乾燥させてあるので、甲殻類アレルギーがなければ問題はありません。ただしえびせんべいなどの人間用のおやつは、塩分が多すぎるので与えないようにしましょう。
猫がエビの殻や尾を誤食してしまいました。どうしたらよいでしょう?
誤食してすぐの場合や誤食した量によっては催吐処置を行う場合もありますので、動物病院に行くことをお勧めします。
数時間経過している場合は無理に吐かせる処置は行わず、経過観察しましょう。殻や尾は消化が悪いので、嘔吐や下痢などの消化器症状が見られた場合はすぐに動物病院を受診してください。
チアミナーゼはエビ以外にどんなものに多く含まれていますか?
魚介類や甲殻類、ぜんまいやわらびなどのシダ類です。
まとめ

エビは、栄養価が高い上に高たんぱく低脂肪な食べ物ですが、猫にとっては敢えて食べさせるメリットは少ない食べ物です。特に生のエビにはチアミン(ビタミンB₁)分解酵素であるチアミナーゼが多く含まれているので、生で与えるのは避けるべきです。
どうしても与えたい場合はしっかり加熱して、消化の悪い殻や尾を除いた身の部分のみ与えましょう。
ただし加熱しても急性・慢性のアレルギー症状や消化器症状が生じる可能性があります。
またエビに限らず、人間の感覚で食べ物を与えると猫の身体に負担になるため、与える量には注意が必要です。
<参考文献>
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