犬のエナメル質形成不全について

犬のエナメル質形成不全について

2022/9/13
獣医師
【監修医】町田 健吾
獣医師

歯が形成される発育過程中に起こるエナメル質の欠損の事

上を向き口を開けている大型犬

エナメル質形成不全とは歯が形成される発育過程中に起こるエナメル質の欠損の事です。

エナメル質は歯の表面を覆う非常に薄い構造で、欠損は限局的なものから歯列に帯状に変化の見られるものまで様々です。また、軽度の障害では茶褐色に変色するだけですが、中程度あるいは重度の症例ではエナメル質の量的/質的変化が認められます。

診断は肉眼的な所見と探針と呼ばれる歯科用の検査器具で触覚検査が必要となります。
また、歯根の形成不全を併発するという報告もあるため、同時に歯科用レントゲン検査による歯根の評価をする必要があります。

エナメル質形成不全は生後4か月齢までにジステンーパーウイルスの感染を受けるとエナメル質の形成障害が生じる可能性があるとされています。その他、熱性疾患、栄養障害、ビタミン欠乏、ホルモン異常、フッ素などの過剰摂取、テトラサイクリンなどの薬物投与などが原因として挙げられます。
なお、犬では人間と異なり、明らかな遺伝によって発症したという報告はありません。

エナメル質が欠損した歯は以下の事が問題となります

・見た目(審美性)が悪くなる。
・虫歯になりやすくなる。
・象牙質が露出する事によって知覚過敏になる。
・エナメル質が欠損しているため歯が折れやすくなる。
・表面が粗造であるため歯垢や歯石が付着しやすくなり歯周病になりやすくなる。

本疾患に対する治療は、歯質の保護、歯周病の予防、知覚過敏の防止、歯冠形態の回復、咀嚼機能の維持と回復および審美性の改善などを目的として、エナメル質が欠損した所にコンポジットレジンという合成樹脂を被せて歯の表面を平滑にする方法が主に行われます。
また、歯根の変形や形成不全を伴うことが多いため、歯科用のレントゲン撮影し、すべての歯の状況を確認して予後を予測する必要があります。

治療後は歯周病にならないために、さらに修復剤が長持ちするために歯ブラシによる歯磨きを毎日行い、なるべく硬いものを咬ませないように注意する必要があります。

獣医師
【監修医】町田 健吾

荻窪ツイン動物病院/東京都 杉並区 上荻1-23-18
◇所属学会等:獣医麻酔外科学会、日本獣医がん学会、小動物歯科研究会

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