犬のエナメル質形成不全について
歯が形成される発育過程中に起こるエナメル質の欠損の事
エナメル質形成不全とは歯が形成される発育過程中に起こるエナメル質の欠損の事です。
エナメル質は歯の表面を覆う非常に薄い構造で、欠損は限局的なものから歯列に帯状に変化の見られるものまで様々です。また、軽度の障害では茶褐色に変色するだけですが、中程度あるいは重度の症例ではエナメル質の量的/質的変化が認められます。
診断は肉眼的な所見と探針と呼ばれる歯科用の検査器具で触覚検査が必要となります。
また、歯根の形成不全を併発するという報告もあるため、同時に歯科用レントゲン検査による歯根の評価をする必要があります。
エナメル質形成不全は生後4か月齢までにジステンーパーウイルスの感染を受けるとエナメル質の形成障害が生じる可能性があるとされています。その他、熱性疾患、栄養障害、ビタミン欠乏、ホルモン異常、フッ素などの過剰摂取、テトラサイクリンなどの薬物投与などが原因として挙げられます。
なお、犬では人間と異なり、明らかな遺伝によって発症したという報告はありません。
エナメル質が欠損した歯は以下の事が問題となります
・見た目(審美性)が悪くなる。
・虫歯になりやすくなる。
・象牙質が露出する事によって知覚過敏になる。
・エナメル質が欠損しているため歯が折れやすくなる。
・表面が粗造であるため歯垢や歯石が付着しやすくなり歯周病になりやすくなる。
本疾患に対する治療は、歯質の保護、歯周病の予防、知覚過敏の防止、歯冠形態の回復、咀嚼機能の維持と回復および審美性の改善などを目的として、エナメル質が欠損した所にコンポジットレジンという合成樹脂を被せて歯の表面を平滑にする方法が主に行われます。
また、歯根の変形や形成不全を伴うことが多いため、歯科用のレントゲン撮影し、すべての歯の状況を確認して予後を予測する必要があります。
治療後は歯周病にならないために、さらに修復剤が長持ちするために歯ブラシによる歯磨きを毎日行い、なるべく硬いものを咬ませないように注意する必要があります。
犬の新着記事
-
犬に噛み癖をつけない、直すにはどうしたらいい?犬が飼い主を噛む原因と対処法
-
【獣医師監修】犬と猫のフィラリア、初期症状や予防法、薬の期間は?治るの?
-
【獣医師執筆】犬の暑さ対策、エアコンなしはOK?快適に過ごすための工夫を詳しく解説
-
【獣医師執筆】犬猫のノミ・ダニ対策と見つけた際の対処法、予防などを詳しく解説。人間への影響は?
-
【獣医師執筆】犬の去勢手術はどうする?いつが適正?メリット・デメリットを知って考えよう
Ranking
-
1
【獣医師執筆】犬が飼い主の手や顔を舐めるのはなぜ?愛犬の気持ちや、やめさせたい時の対処法など
-
2
【獣医師執筆】犬が誤飲・誤食したかもしれない!チェックすべき症状と対処法。うんちで出るの?
-
3
【獣医師執筆】犬が一緒に寝たがるのはなぜ?犬と一緒に寝てもいい?獣医師が詳しく解説
-
4
【獣医師執筆】犬に危険な植物・観葉植物は?室内や庭、お散歩時に要注意!
-
5
【獣医師が答える】犬のワクチンQ&A
-
6
【獣医師執筆】犬の去勢手術はどうする?いつが適正?メリット・デメリットを知って考えよう
-
7
【獣医師執筆】犬に蕎麦(そば)は与えてもOK。量や与え方、注意点などを詳しく解説
-
8
犬に噛み癖をつけない、直すにはどうしたらいい?犬が飼い主を噛む原因と対処法
-
9
【獣医師執筆】犬にネギは絶対あげちゃダメ。危険な量や症状、対処法を詳しく解説
-
10
【獣医師執筆】犬の避妊手術はするべき?時期や費用、メリット、デメリットなどを詳しく解説