【獣医師執筆】猫にチョコレートはあげちゃダメ。危険な量や症状、対処法を詳しく解説

【獣医師執筆】猫にチョコレートはあげちゃダメ。危険な量や症状、対処法を詳しく解説

2022/12/1

チョコレートは猫に中毒を引き起こす有毒な成分が入っています。しかしチョコ製品に入っている脂肪分は猫にとって美味しいものなので、興味を持つことも多いでしょう。

もし猫がチョコレートを舐めてしまったり食べてしまったりした場合、どんな症状が起こり、どう対処すればよいかを獣医師が詳しく解説します。

獣医師
【執筆医】山田 あさか
獣医師

猫にチョコレートがダメな理由

板チョコレート

猫にチョコレートをあげてはいけません。 チョコレートだけでなく、チョコ味のクッキーやチョコレートケーキ、そしてココア成分も猫にとっては有毒なので、食べさせないようにしましょう。

ポイント

チョコレートには猫に中毒を引き起こす、有毒物質が入っている

チョコレートのついたビニール包装を食べてしまうことも危険

猫はチョコレートそのものはあまり好きではないが、動物性脂肪が入っているので食べたがるので注意

   

猫は甘味を感じないと言われており、甘い食べ物には魅力を感じません。それでも猫が机の上においてあったチョコレートケーキを食べていた!というケースは多くあります。

猫はチョコレートそのものに魅力を感じているわけではなく、チョコレート製品に含まれている脂肪分の匂いで、食べたい!と思っているようです。そのためチョコレートそのものよりも、チョコレートクリームや、チョコレートケーキなどが誤食の原因となりやすいので気を付けましょう

犬ほどにはチョコレートに興味はないので、大量に食べることは少ないのですが、チョコレート製品に入っている生クリームやバターの匂いは大好きです。  さらには、チョコレートケーキを包んでいたビニール製品を食べてしまう、という状況もよくあり、酷ければ腸に詰まることもあります。十分に注意しましょう。

猫がチョコレートを食べた時の症状

   

ポイント

ごくごく少量であれば無症状なこともある

ヨダレ、吐き気、下痢などの消化器症状が多い

興奮や痙攣などの神経症状が出ることもある

神経症状は、興奮状態になるだけのものと、痙攣が出るような重症なものもあります。 興奮状態の猫は、変に走り回ったり、鳴き声をあげたり、口をあけて呼吸したり、などいつもとは違う行動をとります

   

猫がチョコレートを食べてしまった場合、ごく少量で中毒量にいたっていなければ、無症状で終わることもありますが、大量のヨダレや吐き気、下痢などの消化器症状が出ることも。

大量のチョコレートを食べていたケースでは、中毒成分であるテオブロミンやカフェインによって、神経症状が出ることもあります。

猫に症状が出るまでの時間   

ポイント

中毒量になっていれば、2時間後あたりから症状が出る

半日以上たってから症状が出ることもある

   

体に入って吸収され始めると症状が出るので、食べてから2~3時間ほどで症状が出ることが多いでしょう。 しかし猫はチョコレートの成分が肝臓で代謝される速度が遅いために、半日経ってから体調に変化が出ることもあります。食べた直後に元気でも油断は禁物です。

猫に危険なチョコレートの量

ソファに顔をおいてくつろいでいる三毛猫

チョコレートに含まれる中毒物質「テオブロミン」の量によって変わりますので、チョコの種類により様々です。また猫の体重によっても異なります。

高カカオ含有のチョコレートであれば、テオブロミンが多く含まれているので、ひとかけらでも危険。逆にホワイトチョコレートであれば、多くは含まれていないことが多いです。

猫に中毒が起こるテオブロミン量、致死量

【中毒量】

猫に中毒症状が起こるテオブロミン量は、猫の体重1kgあたりに90-100㎎というデータがあります。

体重4㎏前後の猫であれば、テオブロミン360㎎-400㎎になるでしょう。

   

【致死量】

致死量は猫の体重1kgあたりに250-500㎎なので、体重4㎏前後の猫であれば1000-2000mgと言われています。 75%や99%のカカオ含有のチョコレートであれば、100g当たりのテオブロミン量は900-1100mgにもなるので、要注意です。

猫に危険なチョコレートの量まとめ

ポイント

中毒量は、猫の体重1kgあたり90-100㎎

一般的な猫(体重4kg)では360-400㎎

致死量は、1頭につき1000㎎前後

高カカオチョコでは、25g(約板チョコ半分)で中毒量、100g(約板チョコ2枚分)で致死量となることも

猫がチョコレートを食べた時の対処法

Natural  cocoa powder, butter, chocolate  and cocoa beans  on a black  background

すぐに動物病院を受診する

  • 外袋など食べてしまったチョコレートの成分が分かるものをもっていく
  • 同じものがまだあれば、現物を持っていく
  • 食べた時間、食べた量を獣医師に伝えられるように控えておく
  • 自宅で吐かせるのはリスクがあるので、してはダメ
  • 動物病院に行く前に事前に連絡してから受診することも大切

受診する時には、食べてしまったチョコレートの成分がわかるような、外装も持っていってくださいね。同じ製品が残っていれば、それも持参できるとより良いでしょう。どのくらいの量を、何時ぐらいに食べたのか、もとても大切です。

獣医師としては、どのくらいの危険性がある状態なのか、吐かせる必要があるのかを判断したいためです。吐かせる処置もある程度のリスクがあるので、必要性があるのかが大切です。

また家で吐かせるようなことをしてはいけません。 吐かせる処置にはリスクがあるからです。

吐かせる処置のリスク

  • 誤嚥(吐いたものが肺に入る)
  • 方法によっては胃腸障害
  • 猫の体質によっては痙攣が出る
  • 吐かない(猫に負担をかけてしまうだけ)
  • 脱水

動物病院で行うこと

Gray tabby fluffy cat with a red heart on the face

猫がチョコを食べてしまった時、動物病院ではどのようなことを行うのでしょうか? 受診前に知っておくと安心ですね。

  • 体重測定
  • 身体検査・食べたものに含まれる中毒物質の量を推測
  • 必要であれば吐かせる処置
  • 必要であれば心電図検査や血液検査
  • 重症度に応じて、点滴入院
  • 中毒物質を吸着させるお薬の処方

   

大切なのは体重で、中毒量になっている可能性があるのかの計算に必須な値です。そして身体検査で心臓の音や瞳孔の大きさ、涎の有無なども確認します。

食べたチョコの量から中毒になる可能性が高いようであれば、吐かせる処置を行うこともあります。

ただし吐かせる処置が有効なのは胃内にチョコが残っているときだけ。 食べてから2時間以上経過しており胃から腸にいってしまっていたら、吐かせる処置を行っても出てこない可能性が高いためです。

リスクの高い吐かせ方

  • 高濃度の塩水
  • オキシドール

   

これらは昔の獣医療や民間療法で行われていた催吐処置法です。 塩水もオキシドールも体に大量に入れて良いものではなく、腎不全や胃潰瘍になる可能性があるので、絶対に家でも実施しないようにしましょう。

動物病院での吐かせ方

  • トラネキサム酸を使用
  • メデトミジンを使用
  • キシラジンを使用

   

各動物病院さんで催吐処置の方法は異なりますが、代表的なのはこの3つです。

これらの薬剤を投与すると、気持ちが悪くなり、吐き戻します。もともと吐かせるための薬剤ではないので、効用外使用で、獣医師の責任において実施されます。

トラネキサム酸は止血剤ですが、血管内に投与すると吐き気がおきます。しかし、猫ではトラネキサム酸では催吐に成功しないこともあり、そしてごく稀に痙攣が出ることがあるので、しっかりと事前に説明をうけるようにしましょう。

メデトミジンとキシラジンは鎮静や麻酔薬の1つですが、注射すると猫が吐き気を催すことが多いので、催吐処置に使用されます。 しかし鎮静の効果も出ること、そして循環器への効果も出てしまうので、獣医師が催吐に最適かを判断して使用します。

なぜ中毒症状が出てしまうのか?

角からこちらを見つめるエキゾチックショートヘア

チョコレートに含まれるカフェインとテオブロミンが中毒物質であり、さまざまな症状をおこします。

人にとっては健康成分にもなるカフェインとテオブロミンが、なぜ猫には毒になってしまうのでしょうか?

ポイント

中毒物質である、カフェインとテオブロミンが入っている

テオブロミンは少量で動物に影響を与える特性がある

テオブロミンはカカオ豆の苦味成分で、アルカロイドと呼ばれるもの。アルカロイドとは、植物が作り出す成分のうち、少量で動物に効果を持っているものの総称です。

猫の中枢神経や循環器、消化器に作用しダメージを与える

テオブロミンは少量で影響が出る上にカフェインと似た構造を持っていますので、中枢神経(脳)の興奮や、心臓や血管への作用、消化器系への作用があります。

猫はテオブロミンの無毒化に時間がかかる上に、基本的に体重が軽く少量でも危険

猫は人よりも体重がとても軽いこと、そしてテオブロミンを無毒化する能力が少ないことから、少量でも中毒症状がでることがあるのです。

   

人にとっては一かけらのチョコでも、猫の体重からすれば、その効果は体重換算でも10~20倍にもなってしまうので、中毒症状が出てしまうのでしょう。 何でも多すぎれば中毒物質になってしまうのです。

Q&A

テオブロミン量は少ない可能性がありますが、脂肪分で下痢や吐き気が出るかもしれません。
「チョコレート風味のクリーム」であれば、テオブロミンの含有量は少ないことが多いので、中毒症状は出ない可能性がありますが、生クリームの脂肪分や糖分が猫にとっては有害になることがあります。
 猫は脂肪の代謝は得意な動物ではあるものの、それでも食べ過ぎれば吐き気や下痢、酷ければ膵炎になります。
また糖分の代謝は不得意なので、高血糖になるとなかなか下げることが出来ないでしょう。
 クリスマスやバレンタイン、誕生日などの記念日には、チョコレートケーキやチョコレート製品のお菓子が多くなるので、猫の誤食には十分に注意してくださいね。
誤食ではお菓子のパッケージごと食べていることもあるので、腸に詰まってしまうリスクも高くなり、全身麻酔での内視鏡や開腹手術という結果になることもあります。

まとめ

猫がチョコを食べるとテオブロミンの作用で中毒症状が出ることがあります。高カカオ製品が増えているので、少量でも注意しましょう。
 
食べてしまったことが分かったらすぐに動物病院に連絡して受診することが大切です。必要であれば吐かせる処置や血液検査、点滴、吸着剤が処方されます。
 
しかし何より大切なのは、誤食させないことですね。猫に誤食されないように冷蔵庫などにチョコは保管しましょう。

   

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猫の食べ物による中毒について

獣医師
【執筆医】山田 あさか

獣医師、猫専門家(Catvocate)取得。
これまでに小鳥、犬、猫を飼育し、現在はウサギと生活中。小動物(犬、猫、うさぎ、フェレット、鳥、ハリネズミ、チンチラ、レオパ)を日々診察する傍ら、正しい知識の発信にも尽力しています。

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