
【獣医師執筆】猫のダイエットどうしたらいい?そもそも肥満?運動、食事、期間など詳しく解説
まるくてぽっちゃりした猫は、見ていてかわいいですね。しかし、その見た目は太りすぎかもしれません!猫は散歩に行かない子がほとんどで、積極的に遊ぶことが少ないため太りやすいです。
正直、猫のダイエットは犬のダイエットより難しいことがほとんどです。今回は猫のダイエットについてお話しします。
目 次
うちの猫はそもそも肥満?ダイエットするべき?

猫の体重、体型の目安
猫の体重目安
成猫であれば3~5㎏位
(メインクーンなどのオスは7~8㎏位)
猫は犬に比べると、個体ごとの体形差があまりない動物です。猫種によりますが、成猫であれば3~5㎏位の体重が標準でしょう。しかし、メインクーンやノルウェージャンフォレストキャットのオスは7~8㎏位が標準とされています。
ただし標準体重を数字だけで考えるのは難しいですので、体格も合わせて確認しましょう。
一般的に体格の評価はBCS(Body Condition Score: ボディコンディションスコア)で行います。
体格を5段階に分けて「やせすぎ」「やせ気味」「理想体重」「太り気味」「太りすぎ」に分類、体重で評価するのではなく、「肋骨」「臀部(おしり)」「体型」の状態で評価します(9段階で評価する方法もあります)

BCS1 痩せ

BCS2 やや痩せ

BCS3 理想体重

BCS4 やや肥満

BCS5 肥満

<出典>「飼い主のためのペットフード・ガイドライン ~犬・猫の健康を守るために~」(環境省)
<参考>
猫のご飯の適正量

ご飯の適正量は、基本的には食べているキャットフードの外袋に記載されています。おおよその体重別に量が書かれているので確認しましょう。
よくある間違いは、記載されている量が1回量だと思ってしまうことです。ほとんどのキャットフードは1日量で記載されています。この量の見間違いで肥満になってしまうことが時々あります。
先ほど、適正量は袋にかかれていると説明しましたが、これはあくまでも目安と考えてください。すべての猫が同じ生活をしているわけではなく、活発な子もいればまったりと過ごすことが好きな猫もいます。基礎代謝や運動量が異なれば、同じ量を食べても太ったり、やせたりします。
愛猫にピッタリな量の見つけ方

- ひとまず袋に記載されている量であげてみる
- 1か月後を目安に体重測定
- あまり体重が変わらなければその量が適正です!
やせていたり、太りすぎている場合は量を調節しましょう。 同時に体系(BCS)も確認していくと、より一層フードの適正量がわかりやすいと思います
猫が太ってしまうのはなぜ?

摂取カロリーよりも消費カロリーが少ないため
理由はシンプルで、摂取カロリーよりも消費カロリーが少ないためです。
同じ家で同じフードを食べているのに、1匹は太り、1匹は太らないという皮肉なことはよく起こりますが、運動量の違い、基礎代謝(生命維持に必要な最低限のエネルギー)の違いなどによって消費カロリーが異なるからです。
また、基礎代謝の中でも筋肉が一番多くカロリーを消費しますので、筋肉が多いほど代謝が上がり、消費カロリーが増えて痩せやすくなります。
運動する猫は筋肉をよく使うのでさらにやせやすくなります。脂肪が多くぽちゃぽちゃした猫は運動嫌いが多く、動きたがらないのでさらに太る傾向があります。
避妊手術や去勢手術による代謝の低下
避妊手術や去勢手術をすると太るということも、多くの飼主さまがご存じでしょう。手術後は安静時の代謝率が20~25%低下するといわれています。手術をする前に比べると、必要とするカロリーがおおよそ1/5~1/4減るということ。
さらに雌の場合、女性ホルモンであるエストロゲンは、食欲を抑える働きがありますが、手術を行うとエストロゲンの分泌が減少し食欲が増加してしまいます。
食べ過ぎることが体重増加の大きな原因ではありますが、それ以外にも様々なことが原因としてあげられます。
猫に筋肉太りはあるの?その場合はダイエットすべき?
あまり見かけませんが、運動量が多い猫の場合は筋肉太りする可能性はあります。筋肉太りは、筋肉が盛り上がっている状態です。肥満と言っても一般的な脂肪太りではありませんので、ダイエットの必要はないでしょう。
いざ!猫のダイエット(食事編)

フードの量を極端に減らすことはNG
ダイエットだ!と思ったときに一番最初に思いつくことは、フードの量を減らすことではないでしょうか?
早くやせさせようと思って、いつものフードの量を極端に減らすことはNGです。確かにカロリーは減りますが、必要な栄養素も同時に減ってしまいます。さらに、猫は極端に食事量が減ると肝リピドーシスという病気を引き起こし、最悪の場合黄疸が出て亡くなってしまうことがあります。
<関連記事>
ダイエットフードを活用しよう
猫のダイエットは、100gあたりのカロリーが低いダイエットフードを選びましょう。フードによっては、ダイエットの助けになるような成分が含まれているものもあります。
大事なのは、カロリーが低くて必要な栄養素が不足しないフードをあげることです。カロリーばかり気にして、栄養失調にしてしまうケースは割と多いです。悩んだら動物病院で相談してみるのもよいでしょう。
おやつをやめる!
おやつをやめただけで、体重が減っていく猫もいます。キャットフードよりおやつが多くなっていませんか?おやつを楽しみにしている猫も多くいますので、カロリーが低めのものを選んだり、いつもあげているおやつの量を減らすなどが、ダイエット中は必要でしょう。
多頭飼育で1頭だけ痩せたいときは
多頭飼育で、ダイエットをしないといけない猫が1頭のときは難題です。ダイエット中の猫だけ、まったくおやつをあげないわけにもいきません。
このような場合は、おやつのカロリーを減らすか、ダイエット中の猫にも普通におやつをあげたい場合は、おやつのカロリー分を食事から減らしてください。
ダイエットには我慢はつきものとはいえ、四角四面に考えるとお互いにつらくなります。焦らず、ゆっくりが大事。1日の摂取カロリー内に収めるのであれば、少々のおやつは大目に見ましょう。
いざ!猫のダイエット(運動編)
どうしても猫が運動をしてくれない時は、どうしたらいい?
猫のダイエットが難しいのは、犬のように積極的に散歩に行ったり、遊んだりができない点です。遊んでも長続きせず、激しい遊びも好まない傾向にあります。
そもそも猫は、横への運動よりも上下運動が得意です。毎日の暮らしの中で、自然と上下運動ができるように工夫してみましょう。
おすすめはキャットタワーです。ただし、背の高いものは不安定になることがありますので、設置場所に注意。壁に寄せるなど倒れないようにしてください。さらに、キャットウオークを設置するともっと運動量が増えます。キャットウォークとは、壁に取り付けるステップで、飛び移りながら上下運動が可能です。様々なタイプのものがありますので、選ぶ楽しみも増えるでしょう。
また遊ぶ時間が取れる場合は、猫じゃらしなどの猫の好みに合ったおもちゃで遊んであげましょう。コミュニケーションも取れるので一石二鳥です。


少しでも動く方がカロリー消費量が増え、筋肉も増えますので、ダイエットに効果的です。ちりも積もれば山になると考え、少しの時間でも運動できるように工夫しましょう。
猫のダイエット計画

1ヶ月で何グラム減が妥当?
猫のダイエットは緩やかに進めるのが大切です。無理のないダイエットとは、1週間で体重の1%が減るペースです。例えば、5㎏の猫であれば1週間に50g。少なそうに見えますが、このペースでダイエットすると約1か月で200g程体重が減ります。5か月ほどで、1㎏減量できるペースです。無理なくゆっくり行いましょう。
停滞期はあるの?
坂道を下るようにダイエットできればよいのですが、ダイエットに停滞期はつきものです。
階段を描くように体重が減っていくことがほとんどで、体重が減るまでには細かな停滞期があり、その期間は個体差があります。この停滞期にダイエットをあきらめてしまうことが多く、成功しないということになりがちです。
飼主さまだけで頑張ろうと思わず、1か月に1回程度を目途に、動物病院に診察に行くことをお勧めします。体重測定、フード変更の相談や、なかなか体重が減らないことに対してのアドバイスがもらえるはずです。
これはダメ!危険な猫のダイエット
猫のダイエットで一番やってはいけないことは、急ぐことです。フードの際に言及しましたが、急激なダイエットは命取りになります。極端にフード量を減らしてしまうと、肝リピドーシスという病気を引き起こす恐れがあるからです。
肝リピドーシスは、十分な栄養が取れなくなることで体内の脂肪が分解され、肝臓に急激に蓄積されるために起こるといわれています。食欲不振、嘔吐下痢、脱水症状、黄疸などの症状が現れ、最悪の場合は命を落としてしまいます。
猫のダイエットは1年かけて行うと考え、ゆっくり体重を減らしていきましょう。
猫のダイエット成功例
実際にダイエットに成功した猫の例をご紹介します。

- 去勢オス
- 体重6㎏(去勢手術を行う前は4.5㎏)
- 1年後のワクチン接種のときに、驚くほど体重が増えていたので、ダイエットをお勧め
「去勢した猫用のフードを食べているが、体重が増え続けてしまい悩んでいる」とのことでしたので、減量用のフードに変更し減量プログラムを作りました。
途中、猫がフードに飽きてしまい、フードを変更したり、少し普通のフードを混ぜたりしながら進めました。何度も停滞期に入りましたが理想体重まで約1年で減量できました。
減量プログラムを簡単に作ることができるサイトの一例です。ぜひ活用してみてください。
犬猫の体脂肪測定プログラム(Hill’s Colgate(Japan))
Q&A
猫の1キロは人間の何キロにあたりますか?
体格差や骨格にもよりますが、猫の1㎏は人に換算すると約15㎏です。
肥満は病気ではないので、猫に負担をしいてまで対処するべきか迷います。どのようなリスクがあるのでしょうか?
実は猫の肥満は病気と隣り合わせです。関節炎や糖尿病、心疾患が代表的でしょう。
身体を支えている関節には常に負担がかかります。体重が増加するとその負担はさらに大きくなります。やがて、痛みから歩けなくなってしまうこともあります。
また、肥満の猫の場合、膵臓からインスリンが分泌されていても、インスリンの効きが悪くなり高血糖の状態が続いてしまいます。標準的な体重の猫の4倍以上の確率で糖尿病になりやすいと言われています。
心疾患のリスクについてですが、一般に体重が1㎏増えると毛細血管が1.5㎞伸びるといわれています。その距離分の血液を送り出すことになる心臓には多大な負担がかかってしまいます。心臓は頑張り続けると心肥大などの病気になりやすくなります。
このように、体重が増えることで身体にかかる負担は非常に大きくなりますので、肥満は病気に直結するといえるでしょう。
猫のご飯を減らしたことがストレスで、夜鳴きなどの問題行動がある場合どうしたらいいでしょうか?
極端に量を減らすと、ひもじさから夜泣きや問題行動が起こることがあります。先に述べたように極端にフードの量を減らしてしまうダイエットはお勧めできません。1日量を小分けにしてあげるなど工夫してみましょう。カロリーが低いダイエット用フードであれば、満腹感を感じながらもカロリーは抑えられています。普通のキャットフードを減らすよりも、ダイエット用フードを利用する方が良いと思います。
猫のダイエットに成功したら食事はどうしたら良いでしょうか?ダイエット用フードから切り替えてもいいでしょうか?
いったん普通のフードに切り替えても構いませんが、体重測定はまめに行ってください。少しでも増えたらフードを1割減らすなどしながら、リバウンドしないように飼主さまがコントロールすることが重要です。しばらくの間はダイエット用フードと普通のフードを混ぜてもよいでしょう。
まとめ

今回は猫のダイエットについてお話ししました。丸くてポチャッとした猫は、見るからに愛くるしくかわいいですね。太り気味レベルであれば許容範囲と思いますが、肥満になるとダイエットが必要です。病気と隣り合わせであることもお話ししましたが、これはほんの一例です。普段から食事の量の確認と、猫の体重測定は習慣化していき肥満にならないように気をつけましょう。
施設を探す
猫の新着記事
-
長時間のふみふみ?猫の不思議な行動の秘密
-
猫が立てないときの対処法と予防策
-
猫がよろける原因とは?健康チェックのポイント!
-
猫の背中にフケが出る要因とは?理由と対策を徹底解説
-
【獣医師監修】犬と猫のフィラリア、初期症状や予防法、薬の期間は?治るの?
Ranking
-
1
【獣医師執筆】猫が一緒に寝るのはなぜ?位置で気持ちは違う? 効果や注意点などを詳しく解説
-
2
ここ最近急に猫が痩せたような気がします。どこか悪いのでしょうか。
-
3
【獣医師執筆】猫のフケの原因は病気?取り方や対処法、出やすい猫についても解説
-
4
【獣医師執筆】猫が異物を誤飲・誤食したかも!症状と対処法を知って命を守ろう
-
5
【獣医師執筆】猫の顎ニキビ(猫ニキビ)はなぜできる?拭き方、 薬などのケア方法を詳しく解説
-
6
【獣医師執筆】猫のダイエットどうしたらいい?そもそも肥満?運動、食事、期間など詳しく解説
-
7
【獣医師執筆】猫のストレスサインを知ってチェック!原因とストレス解消法も解説
-
8
【獣医師執筆】猫の避妊手術はした方がいい?後悔しないために、時期や費用、リスクなどを知ろう
-
9
猫が中毒をおこすおもな植物とは
-
10
猫の背中にフケが出る要因とは?理由と対策を徹底解説